笑顔を描いたシールをマスクに貼る「♯SmileMask(スマイルマスク)運動」が福岡で広がっている。一般社団法人福岡青年会議所(以下、福岡JC)が発案し、4月上旬から始めた取り組みだ。「まちを歩けばマスクをした人たちばかりの不安な世の中。マスク越しでも笑顔になって、少しでも明るい気持ちになってほしい」(福岡JC)。プロジェクトを始めた研修委員会の委員長・水崎浩二さん(35)に話を聞いた。
「今、ほとんどの人がマスクをしているでしょう。メンバーの中には子どもを持つ親もたくさんいますが、『マスクのせいで大人の表情が見えないから怖い』、『息苦しいのでマスク着用は嫌』という子どもたちも少なくないんです。3月末に県から外出自粛要請が出た後、僕らに何ができるのかとグループ内で議論していたとき、『こんな時だからこそ、笑顔を広げられる取り組みが大事なんじゃないか』との意見が出ました。そこで、子どもはもちろん、街の人たちの表情がちょっとでも明るくなるように、それぞれの人がニコちゃんマークなどの笑顔をシールに描いて、それをマスクに貼ってみたらいいんじゃないか、というアイデアが生まれたんです」
参加はいたって簡単。無地のシールに笑顔の絵を好きに描いてマスクに貼るだけ。しかし効果は絶大だという。「まずシールに笑顔を描く楽しみがあります。スマイルは十人十色。どんな顔を描くかはけっこう個性が出るんですよ。また、他人のマスクを見る楽しみもあります。それまでは険しい表情でマスクをしていた人も、シールを貼っただけでなんだか気分がほぐれますし、『そのイラスト、可愛いね』などと人から褒められたりして、ソーシャルディスタンスを保ちながら、笑顔のコミュニケーションが生まれています」と水崎さんはいう。
福岡JCでは、無地のシール2万枚を自費で仕入れ、現在、行政機関や学校など希望者に無償で配布している。SNSでは、「♯SmileMask」のハッシュタグをつけて自分のマスク姿を投稿、発信することができ、運動は少しずつ広まっているが、「最近、地元のテレビでようやく取り上げられたばかり。認知度はまだまだです」と水崎さん。
ちなみに、シールは文房具店や100円ショップなどに売っているもの(直径20ミリ、25ミリの丸シールなど)を購入してももちろんOK。色や形も自由だ。「こうしなければいけないという決まりは何もありません。描くのは笑顔にかぎらず、何を描いてもいいと思います」(同)とも。
緊急事態宣言が全国に出され、収入減少、感染への怖れなど、不安は募るばかりだが、水﨑さんは「このスマイルマスク運動を通じて、福岡の街が少しでも明るくなってくれれば」と願っている。そしてこう付け加える。「でも一番の願いは、1日も早く、この運動をする必要がなくなって、みんながマスクなしでとびきりの笑顔になることです」