令和元年に生まれた108人の赤ちゃん写真展 叶姉妹ら撮影の有名写真家が辿り着いた境地

山本 智行 山本 智行

 ポートレートを中心に活躍している兵庫・伊丹市在住の写真家、生原良幸さん(72)の写真展「0歳~令和元年108人のBabyたち~」が5月29日から6月3日まで、オリンパスギャラリー大阪(西区阿波座)で開かれる。新型コロナウイルスの状況次第ではあるものの、現段階では開催予定。ウイルス蔓延で社会全体が疲弊している中、その豊かな表情に癒やされ、元気づけられること間違いなしだ。

 並べられた写真を見ているだけで心がなごむ。1人1人が実に個性的で表情も豊か。赤ちゃんには不思議なパワーが備わっていて、束の間とはいえ、新型コロナによる不安や障害を忘れてしまうほどだ。

 昨年5月1日の改元を機に生原さんは「令和に生まれた命」をテーマに新生児の写真を撮り始めた。以来12月までの8カ月間、双子1組を含めて延べ108人の赤ちゃんを撮影した。

 「オギャーと産まれた瞬間の命を表現できないか。赤ちゃんは家族のみならず社会の宝。命の営み、命の荘厳さを写真を通じて浮かび上がらせたかった」

 2007年と2013年には「笑顔のポートレート」「100歳のポートレート」と題して明治、大正、昭和、平成と4時代を生き抜いた市井の人々の写真展を開催。好評を博した。今回はそのシリーズの延長上という位置づけだ。

 撮影には苦労もあったが、まずは大阪府や兵庫県などの産科病院が理解してくれたことに感謝。両親も喜んで協力してくれ、肖像権などもスムーズにクリアした。

 「産まれてからか3、4日で退院するので、その間での撮影。いつ産まれるか分かりませんので連絡を取り合って駆けつけました。おっぱいを飲んだり、足をバタバタさせたり。赤ちゃんの生命力、それと同時にお母さんの強さ、優しさをあらためて感じました」

 生原さんは徳島県出身。スタート時は主に広告、雑誌、ファッション関係のカメラマンとして俳優、モデル、タレントら著名人を撮影してきた。そうそう、いまでも新御堂沿いにある俳優、高橋英樹(沢井製薬)の看板は生原さんが撮ったものだ。

 また35歳のときには、その年の世界で女性を撮った一番美しい写真「VENES83」(開催地ポーランド)のグランプリを日本人で初めて受賞しているように早くから才能を発揮してきた。

 「これまでいろいろな方を撮って来ました。田辺聖子さん、塩川正十郎さん、安藤忠雄さん。島崎和歌子さんに叶姉妹やC・W・ニコルさんも。数え上げればきりがないほどですが、なかでも千代の富士、松方弘樹さんはレンズ越しの威圧感が凄かった」

 その一方で1980年代後半には南米に住む貧しい少年少女の日常を切り取った「世界の子供たち」メキシコ・ボリビア・ブラジル編の3作品を発表。さらに、その後も関西の政財界や文化人をまとめた「素顔の紳士録」や市井の大阪人を取り上げた「おおさか原人録」などの本も出版している。

 ライフワークとして取り組んだ人物写真はときに、ある財界の大物の遺影に採用されたこともある。「素顔で笑っているところが、一番本人に近いと言ってもらえて。手を合わせながら悲しいけれど、誇らしかった」と話す。

 今回の写真展も生命や人生を表現しようとする活動の一環だ。言葉は話せなくとも、いや、話せないからこそ、赤ちゃんの表情から伝わってくるものがある。笑顔、泣き顔、怒った顔。寝顔、あくびをする顔など、そのすべてが微笑ましい。

 「産まれたばかりでもみんな個性があり、生命力を感じます。いまはコロナウイルスの影響で大変な時代ですが、赤ちゃんを見ていたら楽しくなるし、元気をもらえます。ぜひ、お越しください」と穏やかな表情で話した生原さん。その通りだと思った。そこには希望がある。将来は写真集になればいいなぁ、と願わずにはいられなかった。

◆生原良幸写真展「0歳~令和元年108人のBabyたち」(入場無料)
日時:5月29日~6月3日 10時~18時(木曜日休館)
場所:オリンパスギャラリー大阪(大阪市西区阿波座1ー6ー1 MID西本町ビル1階)

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