散歩すら知らず…遺棄されたテリアミックス犬 アウトドア派の里親のもとで笑顔を取り戻すまで

渡辺 陽 渡辺 陽

 

 似たような犬種の小型犬と一緒に捨てられていたテリアミックス犬。里親のところに来た時は、一般的な家庭犬と比べると表情に乏しかった。成犬なのに保護されるまで散歩もしたことがないようだったが、里親のHさんと電車で山や川に行き、アクティブに過ごしている。

インターチェンジ付近に捨てられた小型犬たち

 2017年11月末、埼玉県の川越インターチェンジ付近に小型犬が何匹も捨てられていた。成犬なのに肉球がパピーのように柔らかく、明らかに散歩に行っていないことが分かった。誰かが保健所に通報して、保健所が捕獲。やがて保管期限が切れて、埼玉県の動物指導センターに行ったという。ここには、県内の保健所で保管期限が切れた子が集められる。

 動物指導センターには、いくつかの保護団体が登録していて、引き出しを行っている。HappyPaws(はっぴぃぽうず)もそのひとつで、2017年12月8日、ふくまるくんたちを引き出した。

 ふくまるくんは、一緒に保護された犬、もちまるちゃんと一緒に預かりボランティアのところに行った。推定1歳、体重は4.4㎏だった。2匹は、保護される前から一緒に暮らしていたようで、とても仲良しだった。2週間もすると散歩を楽しむようになり、走り回ったという。

山や川に一緒に行けるアクティブな犬

 同年11月、埼玉県に住むHさんは、近くに住む家族が飼っていた2匹の犬を立て続けに病気で亡くした。備蓄していたドッグフードやペットシーツが余ってしまったので、寄付先を探す手伝いをして、保護団体のHappyPawsのことを知った。HappyPawsのホームぺージに載っているふくまるくんを見たHさんは、悩んだ末に問い合わせをした。

 「もともとテリア犬が好きなのですが、アウトドア派なので、山や川に一緒に行ける犬を飼えたらいいなと思っていたんです。結太の場合、どんな子なのか詳しいことは分からなかったのですが、なんだか妙に気になりました」

 ふくまるちゃんともちまるちゃんは、どちらもとても人気があった。Hさんは、単身だったが、ダメ元で応募したという。

アウトドアライフの相棒

 年が明けた1月14日、2週間のトライアルが始まった。

 「静かで大人しくて、全然表情がない子でした。家の中を探検することもなく、でも、ごはんは食べてくれました。ボランティアさんが帰っても、騒ぐでもなく、探すでもなく落ち着いていました」

 名前は、仮の名前のふくまるくんから、結太(ゆた)くんに変えた。

 家の中にトイレを設置したが、ちゃんとできたためしがなく、全部失敗。片付けているとブルブル震えていた。水を飲む時も、Hさんが見ると途中でやめてしまう。預かりボランティアは、「捨てられた経緯から考えると、たぶん繁殖業者が捨てたのだろう」と言った。そこで自由を奪われて生活していたので、好きな時に水を飲むこともできなかったと考えられている。Hさん以外の人がなでようと思って手を差し出すと、パッと飛びのいて逃げ、おやつを手からあげようとしても寄ってこなかった。

 また、Hさんのところに来た当初は、肉球が鍛えられていないので、5分くらい散歩しただけで血が出始めた。

 「肉球を保護するために靴を履いて歩かせたり、芝生のところを歩かせてみたりしました。獣医師に脚の筋肉も年齢や体格を考慮すると少ないと言われたのですが、いつの間にか、素足で散歩できるようになりました」

 表情が乏しい時期が続いたが、Hさんは、そのうちなじんでいくだろうと思っていた。3月初旬、近所の大きな公園に連れて行き、Hさんが思いっ切り走ってみると、ようやく“笑って”くれたという。

 結太くんは散歩が大好きなので、どこにでもついてきてくれる。

「24時間一緒にいて、あちらこちら一緒に行きます。最高の相棒です」

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