ペニシリン、ピロリ菌、青色LED、マイクロ波…数々の大きな発見は偶然の産物から

ドクター備忘録

松本 浩彦 松本 浩彦
世界初の抗生物質であるペニシリン/Thitiya Mangprayool(c)123RF.COM
世界初の抗生物質であるペニシリン/Thitiya Mangprayool(c)123RF.COM

 ペニシリンは今では古典的とされていますが、世界初の抗生物質です。1928年、フレミングという化学者が培養していた細菌のシャーレの中に、たまたま青カビが入り込んでしまい、そのカビの周りの細菌が死滅していたことからペニシリンが開発されました。

 ヘリコバクター・ピロリ菌は、オーストラリアのマーシャルという学者がその培養に挑んで何度も失敗していました。1982年の春、研究室の実験助手が孫のイースター祭のために、たまたま休暇を取り、片付ける人もなく5日間、放置された培地にはピロリ菌が繁殖していました。後に判るのですが、ピロリ菌は増殖が遅く培養に時間がかかるのです。

 特許価値200億円とされた青色LEDですが、その中心的な素材となる窒化ガリウムは、たまたま温度の上がらない不調な電気炉で焼いてしまったら良好な品質の結晶層ができ、その開発は大きく進歩しました。

 スペンサーという技術者は、レーダーのマイクロ波を発生する熱電子管の前に、たまたまポケットにチョコレートの棒菓子を入れたまま立っていたら、チョコレートが溶けてしまいました。普通なら、「あーあ、やっちまった」とズボンを洗濯に出して終わりですが、これをヒントに彼は電子レンジを発明します。

 薬剤師のペンバートンは、痛み止めのシロップを作ろうとして失敗を重ねるうちに、たまたま味の良い薬ができたので、助手に冷たい水を加えてみるよう指示します。ところがこれまた助手が間違えて炭酸水を混ぜてしまい、それは後にコカ・コーラと名付けられます。二重の偶然の産物です。

 偶然は重要ですが、それに気付く注意力と、その先の探究心があって科学は進歩してきたといえます。

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