飼い主の動物嫌いを克服させた激かわトイプードル れお君に1日50回「かわいい」

岡部 充代 岡部 充代

「子供のころから犬が大好きでした」「小さいときからずっと家に犬がいました」――犬を飼っている人からよく聞くセリフです。でも、中には「ずっと苦手だっだ」という人もいます。兵庫・西宮市に暮らす立花二三江さんもその一人でした。

「小さいころから喘息があって、動物には近づかないようにしていたんです。大人になっても、特に犬や猫が苦手で、触るどころか近寄ることもできませんでした」

 

 でも今、立花さんは犬と猫を飼っています。きっかけは数年前に大病をしたことでした。「もう少し病院に来るのが遅かったら、死んでいたかもしれないとお医者様に言われました」。立花さんの中で“何か”が変わっていきました。

「友達から聞いてはいたんです、犬や猫がどれだけかわいいかを。でも、あまりピンと来ていませんでした。人の家で犬のにおいがすると『くさい』と思っていましたし、犬と寝てるって聞くと『えっ?』となるほうでしたから。約束をしていた友達がキャンセルの電話をしてきたとき、犬の体調が悪い、この子がいなくなったら生きていけないと泣いていても、『そこまで?』みたいな感じでしたね(苦笑)。でも、自分が命にかかわる病気をして、それくらい愛情を注いでみたい、その気持ちを味わってみたいと思うようになったんです。子供たちは大きくなっていましたし、仕事も辞めたので、動物がいたらさみしくないかなと」

 

 立花さんは家族にナイショでペットショップ巡りをしました。でも、「かわいいけど(飼うのは)無理かな」の繰り返し。そうして1年くらいたったでしょうか。実家のある沖縄に帰省したとき、犬と猫の飼育経験があるいとこから「トイプードルなら毛が抜けないし、喘息の人でも大丈夫では?」と勧められ、小型犬専門のブリーダーの店へ連れて行ってもらいました。

「大切に繁殖されていることが分かるきれいな場所で、ブリーダーさんからは犬への愛情が伝わってきました。『初めての人には絶対に譲らない』と言われたので、何度か通いましたね」

 最初に目に留まったのは白いトイプードルでした。その子を迎えたいと思ったときにはすでに何回か通っていましたが、お目当ての子を決めてから、また通わないとダメだと言われ…かなり厳格なブリーダーさんだったようです。

「また何度か通って『やっぱりこの子にします』と言ったら、『もう決まりました』って(苦笑)。ちょっと落ち込んで、『別の子か…』と思っていたとき、いとこが奥のトリミングルームにいる仔犬を見つけてくれたんです。『あの子かわいい』って。それが(今飼っている)れおでした。でも、『あの子は生後2か月で、まだしばらく母犬と過ごさせるから譲れない』と…」

 

 ブリーダーさんが母犬と一緒に自宅で飼育していた仔犬を、たまたまお店に連れて来ていただけでした。立花さんは一度、西宮に帰りましたが、翌月お店を再訪。すると、生後3か月になっているはずの仔犬はまだお店に出ていませんでしたが、ブリーダーさんから意外な言葉が聞かれました。「4か月になったらいいですよ」。わざわざ関西から通う立花さんの熱意が伝わったのでしょう。

 家に帰った立花さんは、指折り数えて“その日”を待ちました。ブリーダーさんは本当に厳格な方で、沖縄にいる間は抱っこどころか触ることさえ許してもらえなかったそうですから、伊丹空港で初めて触れたときの喜びは想像に難くありません。

「家に連れて帰ってきても、抱っこはしばらくしないで、鳴いてもケージから出さないようにと言われていたので、早く仲良くなりたいなって毎日、思っていました。今はもうかわいくて、かわいくて!1日に50回は『かわいい』って言ってますね(笑)」

 

 ずっと動物に苦手意識を持っていた人が、1匹の犬との出会いでここまで変わるのです。実は、ブリーダーさんはれお君を手元に置いておくつもりだったのだとか。だから、余計に厳しい条件を出したのかもしれません。それでもあきらめなかった立花さんの粘り勝ち。れお君がお店に来ていた日に来店しなければ、いとこが奥の部屋に目をやっていなければ、今の生活はありませんでした。立花さんが「運命」という言葉でれお君との出会いを表現したのもうなずけます。

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