故郷を知らないホッキョクグマ 雪がうれしすぎて野性全開…人工降雪機に2400万円掛けた園の思い

茶良野 くま子 茶良野 くま子

 人工雪もすごいですが、みゆきが暮らすこのホッキョクグマ舎、総面積1000㎡、うち運動場は420㎡あり滝や小川も流れ、全国的にもかなりの「豪邸」なんだそう。当時を知るZIZI1号さんによると、「ほかにはない見せ方を」と、ペンギンプール、アシカ池で取り入れた「水中観察」ができる展示方法をと、アメリカの専門会社に設計と擬岩工事を依頼し、野生のホッキョクグマの生息地であるカナダのハドソン湾沿岸の情景を再現して作られたそうです。

 ガラス越しに水中の様子を観察でき、前足を犬かきのように動かして進み後ろ足は動かさずに舵の役割をする、ということがよく分かります。木の枝やガス管を遊び道具にして泳いだり、人をめがけてダイブすることも。ホッキョクグマが持つ能力、海の熊と言われるほど泳ぎが得意なことが伝えられる「行動展示」なのです。完成当時、北海道・旭山動物園の当時の園長が視察に訪れ、関西弁に訳すと「ええなあ!」と言ったとか。旭山と言えば、この行動展示を世に広めた動物園ですし、当時としては最先端の獣舎だったようです。

 「恐らくお金もたくさんかかったでしょうが、幸いにも作られたのは、阪神・淡路大震災の1年前。神戸港の貨物取扱量は国内トップを誇り、まだ裕福な時代だったからできた部分もあるのでは」と話す関係者も。副園長のオカン(親しみを込めてこう呼ばれています)は「かつて動物園は『檻の中の珍しい動物』を見に来る場所でしたが、今は、『楽しそうにしている動物』を見に来る場所に変わりました」とし、動物園の役割の一つとして、「目の前にいる動物を通して、野生ではどんな暮らしをしているのか、生息地はいまどんな環境にあるのか、思いをはせてほしい」と話します。

 さて、そんな豪邸に雪にと優雅な暮らしを満喫するみゆきですが、「寒いのが苦手?」という噂もあり、確かに真冬は全くプールに入らず、「泳いで~!」とのお客さんの声をガン無視して雪の穴掘りに夢中だそうです。実は、おもちゃにしている2本のガス管のうち、細い方が行方不明で、おそらく、この雪の中にあるので探しているのかも。掘って掘って掘りまくっても、また人工雪に塞がれるので、どうにかして!が本音だったらお気の毒ですが、まあ、楽しそうに見えるから良しとしましょうか。

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