お父さんが着けてた懐かしの「腕時計バンド用カレンダー」 数分で完売の人気も「生産は綱渡り」と明かすワケ

広畑 千春 広畑 千春

 そもそも、カレンダーは紙ほどの厚さのアルミの板に12か月分の日付を印字し、型抜きして作り、1個は約3.5㎝×約1.5㎝という大きさ。「2010年代製造の新しい機械でも試したんですが、それだと何ミクロンのレベルでズレが生じてしまい、それが命取りになってエラー品がすごく増えてしまう。古い機械は職人さんの目と手で、板を送るスピードも調節しながら抜いていく。それに、小さな商品でもアルミ板の仕入れから印刷、型抜きまで全てが一つの生産ライン。素人目には分からなくても職人さんレベルでは工場が変われば対応できるかどうか一からやり直さなければなりません。機械で作ってはいますが、実は『人間の力』が重要なんです」

 東京商工リサーチのまとめでは、2019年の製造業倒産件数は1024件(前年比0.9%増)で10年ぶりに増加に転じました。一方、工業統計調査によれば、町工場が集積している東京都大田区の工場数はピークだった1983(昭和58)年の3割未満に。もちろん技術を武器に躍進する工場も多くありますが、昔ながらの町工場は次々と姿を消しています。

 「工場の方に廃業理由を聞くと、どこも後継者不足と『ものが売れない』と。僕は中国など外国メーカーとの価格競争が原因なのかと思っていたら、部品を使う商品が全く売れていないだそうです。人がモノを買わない、買えない。『戦後最長の景気回復』とか言われても、やっぱり足元には届いていないってことですよね…」

 今年もなんとか生産ラインが確保でき、商品を届けられるようになりました。お店のコメント欄には「ずっと販売して」「ないと困ります」との声が相次ぎ「本当に、ほっとしました。ありがたかった」と根本さん。次は25日からの販売予定ですが「古いものを作り続けられるのは、昔ながらの職人さんの腕と機械があってこそ。もしかしたら、いつかは作れなくなってしまうのかもしれませんが、待っていて下さる方がいらっしゃる限り、なんとか届け続けたいと思っています」と話してくれました。

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