偶然、叔母さんの家の裏口にいるところを見かけた野良猫。ガリガリにやせ細って、眼光鋭い猫だったが、意外にも人懐っこく、地域猫にしようと思い保護したが、放っておけない猫だった。
ガリガリにやせた野良猫
東京都に住む中島さんは、毎年夏になると、花火大会を鑑賞するために夫の叔母さんの家に行く。2018年8月も親戚一同集合した。
叔母さんの家の裏口に一匹の猫が座っていたので、「あの子、どうしたの」と尋ねると、叔母さんは「最近たまにくる。捨て猫か迷い猫だと思う」と言った。ガリガリにやせていたが、野良猫とは思えないほど人懐っこい猫で、生粋の野良ではないようだった。叔母は猫が好きだったが、既に猫を飼っていたので、それ以上増やすことはできなかった。
8月末、中島さんは叔母さんの家の隣に引っ越した。相変わらず、猫は家の裏口に来ていた。
「げっそうりやせて、骨と皮だけになってかわいそうに思えてきたんです。野良猫にエサを与えてはいけないと聞いていたし、どうしようかと思いましたが、放っておけなくておやつやごはんを与えるようになったんです」
いつしか我が子に
猫のお腹を見ると、虫に刺されたような赤い跡がたくさんあり、かゆいようで自分でがぶがぶ噛むので出血していた。見かねて動物病院に連れて行くと、ノミやダニに刺された跡だった。やせこけて小さかったので子猫だと思っていたが、獣医さんは「歯石がたくさんついているので、4、5歳くらいの成猫でしょう」と言った。猫は、獣医さんにもすぐに懐いた。
2018年の8月も記録的猛暑で、食べ物もあまり食べられず、十分水を飲むこともできないと思われた。中島さんはご主人と相談して、猫の去勢手術をして、地域猫として世話をすることにした。去勢をした時、耳をさくら耳にカットしてもらった。名前はシロくんにした。
去勢手術をしてもシロくんは、家にやってきて、やがて家の中と外を出入りするようになった。そのまま玄関ですやすや寝てしまうこともあり、いつの間にかシロくんは中島家の子になっていた。2018年10月頃のことだった。
夫婦の会話が増えた
シロくんを迎えたのはいいが、トイレをなかなか覚えてくれなくて困った中島さん。猫を飼うのは初めてだったので最初は庭でトイレをさせていたが、ちゃんと勉強したほうがいいと思い、東京都が開催した猫のしつけの講習会にも行った。
「どのような形状のトイレがいいのか、土はどのようなものがいいのかなど勉強しました。最初は本物の土をトイレに入れてならし、猫砂は本物の土に近い細かいものを使っています。2019年の暮れには、やっとトイレを覚えてくれたんです」
シロくんは好奇心旺盛で、家の中を探検するのが大好き。甘えん坊で、ご主人が床にあぐらをかいていると、必ずと言っていいほどあぐらの上に乗る。留守番させて帰宅すると、「寂しかったよ」と足に絡みついてくる。
シロくんを飼ってから、中島さん夫妻は、「きょう、シロどうだった」とシロの様子を共有したり、近所の野良猫のことも気にかけたりするようになり、会話が増えたという。