「世界の床を埋め尽くせっ! 畳で、畳で埋め尽くせっ!」「タッ、タッ、タッ、畳っ!」
ロックやファンク、ラップ、果ては演歌まで、和洋ごった煮のメロディーに乗せ、畳への愛情を陽気に歌い上げる。今年で結成10周年を迎えるバンド「日本畳楽器製造」。リーダーで京都市上京区の畳店5代目、西脇一博さん(53)は「目標は『世界総畳化』」と高らかに宣言する。
畳にはめ込んだり、畳表を張って手作りしたギターやドラム、三味線など、唯一無二の畳楽器を引っ提げて、各地のステージを盛り上げる。コミックバンドと思うなかれ。いでたちこそユーモラスだが、内には「需要が減る一方の畳を盛り上げ、その文化を未来へと引き継ぐ」との熱い思いを秘めている。
楽曲の歌詞には畳の吸湿、吸音効果などの利点をわかりやすく織り込み、ステージの合間にはクイズや畳作りのワークショップも催す。2016年、い草の一大産地・熊本が大地震に襲われると、翌年に被災地に向かい、音楽でエールを届けた。
活動は国境も越える。近年はユニークな活動を知った韓国、台湾から催しへの出演オファーが舞い込み、昨年は初めてマレーシアのものづくりイベントでステージに立った。「面白がってくれる人なら、楽器はできなくってもOK」。登録制のバンドメンバーは増え続け、国内外で200人を超えた。
総畳化は現実になりつつあるのか。西脇さんは「(米国の)ホワイトハウスに畳が張られたら達成かな。次は『宇宙総畳化』ですね」と不敵に笑う。“畳ラブ”を叫ぶ歌声は、世界を駆け巡る。