日本公開40年、色褪せない「ゾンビ」の魅力とは 映画評論家と異色の研究者がトーク

黒川 裕生 黒川 裕生

2019年はそんなロメロのゾンビ映画第2作である「ゾンビ(Dawn Of the Dead)」が日本で公開されてからちょうど40年に当たる。この名作には「ディレクターズカット版(139分)」「ダリオ・アルジェント監修版(119分)」「米国劇場公開版(127分)」があるのだが、実はここ日本には幻の“第4のバージョン”が存在した。それが「日本劇場公開版(115分)」だ。配給する日本ヘラルド映画によって、1作目が劇場未公開だった日本の観客向けに、「冒頭の惑星爆発」「残酷シーンの静止画、モノクロ処理」などの独自の編集が施されているのだが、音声や映像が他の映像作品からの流用ではないかと噂されるなど、なかなかのものだったらしい。

残念ながら初公開時のプリントは失われてしまったが、40周年を祝うべく、ゾンビを愛する人たちが「ないならば作ってしまおう」と立ち上がり、日本で独自に(勝手に)足された映像や字幕をCGなどで一からリメイク。クラウドファンディングで資金を集め、ついに「日本初公開復元版」として全国の映画館で上映されることになった。申し遅れましたが、このトークイベントは、シネ・リーブル梅田の公開初日を盛り上げる企画であります。

映画「ゾンビ」の色褪せない魅力

本作についてミルクマンさんは「あの時代に黒人がヒーローというのが革新的。ベトナム戦争の影が濃く反映されたテーマも深い」と語る。「それと、ゾンビがショッピングモールに集まるところはやっぱり面白い」という指摘を受け、福田さんも「あの時代の『別に欲しいものはないけど買い物に行きたい』という欲望自体を皮肉っていますよね。ちょうど郊外にショッピングモールができ始めた時期で、ゾンビ映画で社会をどう切り取るかというロメロらしさが出ています」と補足した。

話は「ビデオの登場とゾンビ映画の関係」「ゾンビのメイクが青っぽい理由」など際限なく広がっていったが、当然、あえなく時間切れ。「万人向けではないけど、ゾンビ仲間がいたら見るように勧めといてください」と締めつつ、「あと1時間くらい喋れるのに」と名残惜しそうに会場を後にした。

「ゾンビ -日本初公開復元版-」はシネ・リーブル梅田で上映中。京都シネマで12月21日、神戸の元町映画館で2020年1月1日から公開予定。

■「ゾンビ -日本初公開復元版-」公式サイト https://www.zombie-40th.com/

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