ブリーダーのもと劣悪な環境で育ったボストンテリアと多頭飼育崩壊の家から保護された猫。似たような境遇の2匹が、現在は同じ屋根の下で幸せに暮らしているという。しかも種が異っているにもかかわらず、2匹は四六時中一緒にいる。
居酒屋の看板犬に
大徳さんは神戸市内で居酒屋を経営している。その居酒屋の看板犬が、もうすぐ2歳になるボストンテリアのごま坊くんだ。頭にゴマ模様があったため、そう名付けた。お店には週に一回“出勤”。お客さんからオヤツをもらうとき以外は定位置でのんびりとくつろいでいる“癒し犬”として人気だ。
もともと大徳家では同じ種類、ボストンテリアを飼っていた。その愛犬を亡くしてペットロスに陥り、1年が経過した。その間ウェブサイト上で似た犬の画像を眺める毎日を過ごしていたが、あるときブリーダーサイトで目に止まったのが、ごま坊くんだ。
「ショボくれた顔、おデコ広め、離れ過ぎな目の仔犬を発見したんです」と運命を感じたという。すぐに愛知のブリーダーの元へ向かったという。ただ、ブリーダーの印象が良くなく「そんな感じがしていました」と、ごま坊くんを引き取りに行くと身体は汚れきっていた。しかもお腹は寄生虫だらけだった。「お腹の中に寄生虫が何種類もいて、栄養失調の上にこの寄生虫の数は薬に耐えられるか分からないから危ないと思って下さい」と医者に告げられた。
病院から追い出される
ごま坊くんとのちに仲良くなる4歳のあん子ちゃんは4年前に多頭飼育崩壊の家から保護された猫だ。あん子ちゃんには、きょうだいが2匹いた。おそらく近親交配の子どもなので後々病気が出るかもと聞かされていた。その通りきょうだい2匹とも原因不明の病気で亡くなり、あん子ちゃんも急な発作で一時歩けなくなって入院した。退院してからも高熱が続き、食欲不良で毎日通院した。しかし、先生には「この子はパルボウィルスです」と言われ、他の猫にも伝染する危険があることから「この子はまず生きられない」という理由で病院を追い出されてしまった。
「そのとき頭が真っ白になりました」と大徳さん。2匹の先住猫にも伝染する不安をかかえながら、まずは家中を消毒した。そしてあん子ちゃんを診てくれる先生を求め、セカンドオピニンへ。何とか診察してくれる病院にたどり着き検査をすると、その結果に驚がくした。「パルボウィルスじゃないですよ」。「えっ」。その後、あん子ちゃんは点滴治療を続け、元気になった。今でも少し歩行障害が残っているが、日常生活に影響はない。大徳さんがこの経験から「絶対諦めない事と、セカンドオピニオンは大事」ということが分かったという。
そんないきさつを経て大徳家で同居しているごま坊くんとあん子ちゃん。他の先住猫2匹は年が離れていることもあって、いつも一緒に遊ぶのはこの2匹だ。時には追いかけっこをしたり、ごま坊くんが寝ていると必ずあん子ちゃんが来て顔をスリスリ、猫同士なら珍しくないが、あん子ちゃんはごま坊くんの毛づくろいまでする。いつも一緒の2匹は毎日を穏やかに過ごしている。