桜を見る会より沢尻エリカ「僕らは所詮その程度」 森達也監督が語る新作、メディア、社会

黒川 裕生 黒川 裕生

メディアは社会の合わせ鏡

本作は東京国際映画祭で「日本映画スプラッシュ部門」の作品賞に輝き、一般公開後は「ぴあ映画初日満足度ランキング」で1位になるなど、熱い注目が集まっている。

「初日、2日目に見てくださるのは『望月頑張れ』って人が多い。そういう人たちからすると、今の望月さん以外のメディアは“マスゴミ”。でも僕は、もしメディアがマスゴミだとするならば、僕らもゴミですよ、と言いたい」

「あれだけ『桜を見る会』の問題が取り沙汰されていたのに、沢尻エリカが逮捕されたらその話題一色になる。理由は視聴率が稼げるから。そして、視聴率の主体はテレビではなく社会です。常々思っていることですが、メディアは社会の合わせ鏡で、つまり僕らはその程度のレベルだということなんです」

「もちろんこれは社会だけの責任ではなくて、メディアの側も『これは数字取れないけど、やるぞ!』という気概みたいなものが以前はもう少しあったと思うんです。さっき言った『組織の論理』がどんどん強くなるってことは、みんなが喜ぶことしかやらなくなるということ。メディアも営利企業ですから。でも、ジャーナリズムがそもそも社会でどういった機能を任されているのかってことを、本当はもっと考えるべきですよ」

「権力は腐敗するし、暴走する。それは当たり前。だからメディアがしっかりウォッチして伝えないと。これだけ疑惑や不祥事が相次ぎながら、安倍首相の在任期間が憲政史上最長記録を更新した理由のひとつは、メディアが機能していないからだと僕は思います」

「i -新聞記者ドキュメント-」はエンタメだ!

…と、少し堅苦しい話になってしまったが、実は本作は徹底的に「エンタメ」である。望月衣塑子というユニークなキャラクターを軸に、時に笑える場面を交えながら、「個」であること、「一人称単数」の視点を持ち続けることの大切さを訴える。

「ドキュメンタリーっていまだに教条的で、啓蒙的で、モノクロフィルムで、眠気を誘うようなものだと思っている人も少なくありませんが、全然違います。僕は自分のスタイルに拘泥する気は全くないので、今回は少し遊びたいと思って、音楽やテロップ、アニメーション、画面のマルチ分割など、いろいろな手法を試してみました」

「笑いもそう。『A』も『FAKE』も笑えることをかなり意識して作ったんだけど、みんな笑うのを我慢して、見終わってから『あれ笑ってよかったんですか』なんて言うんです。『i』も遠慮無く笑ってください。笑いながら大切なことを受け取ってもらえる自信はありますから」

これからも森達也の戦いは続く。

 

「i -新聞記者ドキュメント-」 https://i-shimbunkisha.jp/

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