「教員間いじめ」は日本だけじゃなかった アメリカでの防止策は?

谷口 輝世子 谷口 輝世子
男性教員が所有する車の上に乗る加害側の教員(提供写真、画像の一部を加工しています)
男性教員が所有する車の上に乗る加害側の教員(提供写真、画像の一部を加工しています)

 神戸市須磨区の東須磨小学校の男性教員が同僚の教員4人から暴行や暴言などのいじめ行為を継続的に受けていたことが分かった。

 欧米では2000年ごろから職場でのいじめ対策に力が入れられるようになってきた。学校も職場のひとつであり、学校での教職員いじめについての調査も行われている。日本でも職場いじめやハラスメントについては意識されるようになっているが、教職員間のいじめについての調査は出遅れているようだ。

 英公共放送BBC電子版は2011年4月20日付で教員組合による調査結果について報じている。8年前のこの記事によると、英国の900人以上の教職員を対象にしたこの調査では、約4分の1の教員が、これまでに他の教職員や保護者からいじめられてきたと回答している。誰からいじめられたのかについては、同僚からが25%、保護者からが23%、校長らを含むシニアスタッフからは50%に達した。

 ひとりの回答者は「私は、ストレスに苦しんでいた校長によって、以前の職場から追い出された」とコメント。校長自身がストレスフルな状態で、そのことが自分へのいじめにつながっていたと感じている。

 この記事で報告されているいじめ行為は、ネガティブなコメント、侮辱的な言葉、脅し、精神的虐待が多く、身体的な暴力を受けた人は2%以下だった。教員組合は職場でのいじめから教職員を守る規定などが必要だと対応策を挙げていた。

 米国で行われた調査でも、職場である学校で教職員が同僚、校長らの管理職、保護者からいじめられているという実態を捉えている。職場でのいじめに相当するものは多数あるが、主ないじめ行為は無視、排除、仕事をやめるべきだとほのめかす、怒鳴る、執拗な批判などだ。

 米教育協会は2012年に職場である学校でのいじめについての調査結果を発表。現在の職場で同僚、保護者などの誰かにいじめられたことがあると回答した教員は18%いた。2007年にメリーランド州で1547人の教職員を対象にした調査でも、22%がいじめられていると回答。教職員にいじめられているとした人は8.8%、生徒の保護者から7.7%、生徒からが6.3%だった。

 米教育協会のこの調査では、どのような校種、どのような地域の学校、どのような職員がよりいじめ行為の被害にあっているかなど、いじめが起こりやすい環境についても調べている。郊外や地方の学校よりも都市部の学校のほうがいじめ被害に遭っているという報告が多く、校舎の安全対策に乏しい学校のほうがいじめが起こっているという。調査では、年齢が若く、未婚の教職員のほうがいじめのターゲットになりやすいということも分かったと報告している。

 米教育協会は、職場いじめに関する規則を明確にすることや、教職員が個々の権利と、どのようにしたらいじめについてサポートを求められるかを知ること、今後も職場である学校におけるいじめを調査することを防止策として挙げている。

 しかし、子どものいじめと同様に、教職員間のいじめを解決する特効薬は英国にも、米国にもない。それでも、学校という職場では、他の職場と同じようにいじめがあることを認め、少しずつ調査研究をすすめ、防止につなげようという努力がなされているようだ。

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