さらに、繁殖の難しさも撤退の理由となった。コアラを飼育している国内の動物園のうち、6カ所が北方系なのに対し、南方系はここと「淡路ファームパーク・イングランドの丘」(兵庫県南あわじ市)の2カ所。アークもレンタル移籍し、繁殖に貢献して来たが「2カ所では限界がある」と牧さんは話す。
大阪にコアラがいなくなるのは確かに寂しいが、アークにとっては悪い話ではないかもしれない。16年に息子「そら」が香港の「オーシャンパーク」に貸し出されたが、そのときは高齢を理由に同時移籍を断られ、のんびりと余生を送ることになっていた。そこへ、今春になって英国「ロングリートサファリパーク」からオファーを受け、繁殖にひと役買うことになったのだ。実際に送り出す側としてスタッフを現地に派遣。環境の良さを確認している。
「オスとしてはチャンスでしょう。繁殖能力があることは実証していますし、メスに囲まれて生き生きとするんじゃないですか。輸送費も先方持ち。喜んで迎えてもらえるわけですから幸せだと思います」
そんな状況を知ってか知らずか、アークはこの日もユーカリに登り、くつろいだまま。それでも別れを惜しむように見物客は日に日に増えている。28日13時半からはお別れイベントも開催予定。担当飼育員がアークとの思い出を語り、寄せ書きコーナーも設けられる。大阪のコアラの見納めだ。