大阪からコアラがいなくなる 最後の1頭は英国で婿入り…男盛りの「アーク君」

山本 智行 山本 智行

 もうすぐ大阪からコアラがいなくなる。「天王寺動物園」(大阪市天王寺区)で飼育されていた最後の1頭、12歳のオス「アーク」が10月中旬からイギリスの動物園に”婿入り”することが決まったため。園は高額な餌代と繁殖の難しさからすでにコアラを飼育しない方針を下しており「いまのうちに見に来てほしい」と呼び掛けている。

 渡英して”婿入り”することになった「アーク」はオーストラリア・メルボルン生まれ。1歳半になった2008年に天王寺動物園にやって来た。園長の牧慎一郎さん(48)が言う。

 「愛嬌があって、なかなかの人気者。立派な息子をもうけ、”アークとうちゃん”としても親しまれてきました。いま12歳。コアラは20歳ぐらいまで生きるので、まだ男盛りです。若くはないけど、年寄りでもない。私と同じ48歳ぐらいですが、彼の方はイギリスでもうひと踏ん張りすることになりました」

 日本で3番目に古い天王寺動物園にコアラが来園したのは1989年。メルボルン動物園から3頭が送られた。東京の多摩動物園や名古屋の東山動物園が北方系のコアラだったのに対し、こちらはやや体の大きな南方系だった。

 その後、最大9頭を飼育していたが、餌となるユーカリの栽培、運搬費が高いことを理由に”橋下市政”から見直しが検討されるようになり、4年前の2015年、飼育動物の選定を協議する中で新たなコアラを飼うことを断念した。牧園長が続ける。

 「選択と集中の中で、ゾウやホッキョクグマは推進、オランウータンやコアラは撤退ということになりました」

 実際、アークにかかる年間の餌代は3200万円。これは園全体の3割を占めるとか。というのもコアラはユーカリの、しかも芽しか食べないが、ユーカリは気温の変化に弱く、安定供給が困難。そのため、園では「リスクヘッジを考え」大阪府や鹿児島県など全国5カ所で20種のユーカリを委託栽培してきた。

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