そんな森本さんにとって、より幅広い層に家紋の素晴らしさを伝える「家紋フェス」は数年来の夢だったという。
西陣で着物を修復する家で育った森本さんは20年ほど前、父の影響で家紋に興味を抱くようになった。小さな枠内で表現された意匠の多彩さに引かれ、はまった。「草木や動物、道具などを紋に凝縮し、完璧なまでに完成されたもの」。家紋の魅力をそう表現する。
家紋の起源は平安時代。貴族が牛車や調度品に好みの文様を付けたことが始まりだそうで、江戸時代に着物の柄として広まった。「歌舞伎役者や大相撲の力士、落語家が手ぬぐいに自身の紋を入れて名刺代わりにもしたことで、庶民もおしゃれ感覚でまねるようになった。かしこまったものではなく、バラエティーに富んだ紋が増えた」
家紋というと一部の限られた家だけが持つ「セレブ」の独占物のように思われがちだが、違うようだ。その形も実に多様で、専門家の間でもまだまだ知られていない文様があるという。森本さんは、府内の墓地を巡って墓石に刻まれた家紋の数々を調査する中で、従来の家紋辞典にはない文様を多数発見。その成果を2013年に「日本の家紋大事典」(日本実業出版社)としてまとめた。「講演や出版の活動を通して出会った仲間たちと実行委員会を立ち上げることができ、ここまでこぎつけた」
「家紋フェス」は11月10日に、京都府庁(京都市上京区)の旧本館と旧議場を会場に開かれる。「家紋無双」のキャラのイラスト展示や、家紋アート作品とグッズの展示も予定する。
このほか、家紋の成り立ちを紹介する森本さんの講演やシンポジウム、家族に親しんでもらうために家紋の缶バッジ作りや塗り絵体験なども準備する。この催しを開くため、クラウドファンディングで支援を今月25日まで募集している。
「家紋発祥の地とも言える京都で、家紋の新たな時代の幕開けになるような場にしたい」。令和には家紋ブームが到来するかも。