毎日毎日、うだるような暑さ。そんな中、今年も覆面を被った見るも怪しい「夏の秘密結社フリーソーメン」が各地で登場し、話題を呼んでいます。世界征服を目指す彼らが統治のよすがとするのが「ソーメン」。 強い日差しのもと行き場を失った人々に、氷水で冷えたつるつるのそうめんを無料で提供!…涼やかさの魔力で、人々を扇動し、支配してしまうといいます。同結社には、深い山あいにあるそうめん製麺所の2代目社長も加入して暗躍中。大自然に磨かれたソーメンを武器に、灼熱の大地に迷える私たちを強く導いているといいます。こんなことがまかり通って、本当に良いのでしょうか…。
徳島名産「半田そうめん」をつくる製麺所のひとつ「白滝製麺」を営む森岡大悟さん(44)。フリーソーメンの活動はすでに6年目。今年も8月に白いTシャツで顔を隠し、メガネをかけた怪しげな姿で街中に登場、そうめんを配る活動を始めました。めんつゆには徳島名産つながりですだちを入れるこだわりで、その様子をツイッターに投稿したところ、「出会いたい!」「こういう紛らわしいの好き」といった反響が相次ぎました。
半田そうめんは四国山地と吉野川に挟まれた徳島県つるぎ町・半田地区で作られてきたそうめんです。剣山をはじめとする急峻な山々から吹き降ろす冷たい風と、吉野川の豊かな水などに恵まれ、そうめんづくりが盛んになったという同地区。白滝製麺も緑深い山間で、手延べの伝統的な製法を守ってきました。製麺所のあたりを写した写真を見てください…ああ、これぞ「ザ・日本の山の中」みたいな豊かな自然に囲まれて…これだけで、なんかもう…おいしそうでしょ…!
森岡さんは婿養子で、元サラリーマン。妻の父が体調を崩したのをきっかけに、8年前に跡を継ぎました。「事あるごとに義実家からそうめんをもらって食べていて、それがすごくおいしかった。廃業、という話が出たとき『もったいない』と訴えたら、引っ込みがつかなくなって(笑)」と振り返ります。
とはいえ、そうめんづくりは全くの素人。従業員は6人で、製法は先代を始め、職人の「経験と勘」がすべて。教わる際も、指示は「こんな感じの柔らかさ」「この色になったら!」といった感じで…「独特の肌感覚を自分の中で『数値化』することにかなり時間がかかりました」と話します。
気になる「フリーソーメン」の活動ですが、もともとは東京都内のウェブデザイナーが2014年にまちおこしの一環で始めたもの。ネットを通じて拡散しているのを森岡さんも発見し、「そうめん屋がやったらウケるかも」と乗っかってみることに。黒い覆面でそうめんを作る動画をYouTubeにアップしたところ「思惑以上にバズった」(森岡さん)とかで、今に至ります。そりゃそうですよね、配っているのは名産品、しかも覆面をとれば本職なのですから…!
その後、黒覆面が「イスラム国を連想させる」と小さく炎上したため、覆面は白に変更。毎年徳島市内を中心に半田そうめんを作って配り、その魅力をアピールしています。