吉本興業などの芸人が所属事務所を通さずに反社会的集団の会合に出席し、金銭を受領する「闇営業」をしたとして雨上がり決死隊の宮迫博之らが謹慎処分となった。「反社会的集団とは知らなかった」としているが、知っていたらどのような法的問題があるのか。金銭を受け取ったことによる法的問題は。かつて芸能界で活動し、歌手デビューもした元アイドルの平松まゆき弁護士にQ&A方式で解説してもらった。
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Q 芸人側が「反社会集団と知らなかった」と繰り返してますが、「知っていた」ら法的にどのような問題がありますか。
A まず「闇営業」それ自体が罪になるわけではありません。法的に問題になるのは、詐欺グループといった犯罪集団から金銭を受け取る行為であって、この場合は組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織的犯罪処罰法)第11条の「犯罪収益等収受罪」にあたる可能性があります。受け取る金銭が詐欺を行った結果として得た収益であると知っていたなら「三年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」という処罰を受けます。
Q 知らなかったことは芸人側が証明しなければならないのですか。
A いいえ、民事事件とは異なり刑事事件においては犯罪に該当することの証明は、捜査機関側が行うものとされています。ですから「知らなかった」「聞いていなかった」「分からなかった」等ということを証明する必要はありません。詐欺集団が容易に足がつくような物証を残すとは考えにくいですから、当時どのような会話が交わされたか等の関係者の証言が事情を知っていたかどうかの重要な鍵になるでしょう。
Q 2014年の忘年会の出来事なので時効ということは考えられませんか。
A そのとおり、実は今回のケースは公訴時効なんです。刑事訴訟法250条2項で公訴時効について定められていますが、組織的犯罪処罰法第11条の罪は長期が「5年未満」ですから3年で公訴時効を迎えます。とはいっても、公訴時効は刑事事件として訴追することができないというだけで、犯罪行為が帳消しになる、許される、というわけではありませんから社会的な制裁は免れません。
Q このほか金銭を受け取ったことなどを含めて法的な問題はありますか。
A もし受け取ったギャラを所得として申告していなければ脱税であって所得税法違反にあたります。脱税行為についての刑事事件の公訴時効は最長で7年ですから、こちらはまだ時効ではありません。ただ脱税を刑事事件化するというのは大がかりな企業犯罪等が想定されますから、今回は追徴課税といったペナルティにとどまるかもしれません。他方、民事事件化はあり得ます。つまり契約上の問題として会社から芸人さんに対して損害賠償請求がなされる可能性はあります。吉本興業には契約書がないという問題も話題になっていましたが、書面がなくても契約は成立しますから、会社から金銭的な責任を追及されるということもないわけでありません。いずれにせよ、事務所に黙って「闇営業」をしたことは言い逃れようのない事実ですから、今回の騒動はそのツケというほかないのではないでしょうか。