7年間ひきこもりだった僕が、また働き始められた理由

広畑 千春 広畑 千春

 ひきこもりの定義は、「学校や仕事に行かず、かつ家族以外との交流をほとんどせずに、6カ月以上続けて自宅に引きこもっている状態」とされる。

 兵庫県立大の川田美和准教授(精神看護学)は、「ひきこもりの背景は様々で、複数の要因が絡み合っているとされており、その一つとして精神疾患が関連していることも少なくない」と指摘。一方で「精神疾患の有無に関わらず、シンさんのように無理をし過ぎてエネルギーの枯渇状態に陥っていることも多い。ひきこもりはいわば、ストレスフルな社会への不適応状態であり、自分を守るための手段でもあるのです」と話す。

 そして、「ほとんどのひきこもり状態の人は、シンさんのように、社会に出る自信をなくし、安心できる場所が家庭しかない状態でありながら、何もできていないことに罪悪感を抱いている。あるいは、罪悪感を感じないように、ひきこもっている理由を自分以外の何かに転嫁し、その状態を維持している。生きていくために必要だからです」という。

 その上で、ひきこもりからの脱却には状況に応じた適切なサポートが必要であり、「まずは、これまで十分に頑張ってきたこと、今は安心できる場所が家庭しかないこと、そして、心のどこかで罪悪感を感じながら生活していることを理解することが重要」と強調する。

 「十分な理解と共感を示しつつ、ほんの一押し背中を押すことの繰り返しが大切。自信を回復し、社会や人が安全であることを実感するには時間がかかるため、気長であきらめない支援が必要になりますが、家族だけが担っていくには荷が重すぎる。本人が支援につながらない場合、まずは家族だけでも支援機関につながってほしい。ひきこもり状態にある人やその家族への支援体制は、まだまだ不十分なことも多いですが、それでも以前に比べれば格段に進歩している。家族がどこかに繋がってくれれば、その後の可能性は大幅に広がります」

 「現在、ひきこもり状態にあったとされる人がおこす事件が、過剰な報道とともに注目を浴びており、ニュースを見聞きして、不安になった当事者や家族がいるであろうことを思うと胸が痛む」と川田准教授。「多くのひきこもり状態にある人や精神疾患をもつ人は、真面目に頑張っており、事件の加害者となることからは、ほど遠い人達です。報道を機に私達がすべきことは、当事者や家族を追い詰めることではなく、むしろ、当事者や家族が安心して生活できる社会をいかに創っていくかを考えることではないでしょうか。ひきこもりや精神疾患は、誰にでもおこりうる問題です。ぜひ、一人でも多くの人に、自分の問題として考えてほしいと思います」

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