“変幻自在のトリックスター”の愛称で知られた元格闘家の須藤元気氏(41)が、立憲民主党から今夏の参院選比例代表に出馬する意向を表明したことに対し、SNSで賛否両論の反応が起きている。10年前の2009年、須藤氏はデイリースポーツの取材に対し、政治への挑戦を示唆していた。今回の動きに重なる当時の発言内容を検証すると、“ロスジェネ”がキーワードとして浮かんできた。
記者が須藤氏の存在を知ったのは、1999年から主戦場としていた格闘技団体「パンクラス」のリング。知る人ぞ知る存在だったが、02年からK-1ミドル級の「MAX」シリーズに参戦し、魔裟斗や昨年亡くなった山本“KID”徳郁さんとも拳を交えた。マニア層以外にも知名度が広がっただけに、今回の反響は大きかった。
ツイッターでは「よりによって何故立民?」「残念」「がっかり」と、須藤には好感を持っていたが、同党への不信感を持つ人たちが失望感をあらわにするコメントが目についた。一方で「地球市民的な雰囲気あったので、今回の立憲民主からの出馬にも特に驚きとかはないです」と理解を示す声や、「スポーツ選手が自民に行きやすい中、立憲から出馬してくれるなんて」「第二の山本太郎のような議員になれますよ」など、逆風の中で野党から出馬する姿勢を支持する声も続いた。
格闘家を引退し、08年に拓大レスリング部監督に就任。作家活動やパフォーマンスユニット「WORLD ORDER」などマルチクリエイターとしての活動が精力的になった時期にインタビューを試みたのが09年8月。翌月掲載された紙面を振り返ってみる。
拓大大学院に入学した当時31歳の須藤氏に専攻を尋ねると「地方政治行政研究科です。もともと政治に興味があった」と発言。政治への思いを聞いた。
「日本の政治システムは55年体制から続く利権調整型。僕らの世代はロスト・ジェネレーションといって、日本に2000万人ぐらいいて、これから日本の中核を担う。地方も合わせると1000兆円近い借金がある日本にあって、今後、僕らの世代がこの天文学的な借金をどうやって返していくのかと考えるとワクワクします」
“ロスジェネ”という略称で定着した「失われた世代」は、バブル崩壊後の就職氷河期を体験した団塊ジュニア世代やその後の経済停滞期に就職活動をした人たち。現在35~45歳くらいの年代で、78年生まれの須藤氏はそのど真ん中にいる。非正規雇用の人も多く、総じて慎重で堅実、転職に備えてスキルアップ志向が強いという。
その代表者として、須藤氏は10年前の記事で「WE ARE ALL ONE」を信条に掲げた。今月の出馬会見でも「多様性を重視している点が『WE ARE ALL ONE』の精神と重なる」として、立民党を選んだ理由を説明した。
「すべては一つ、という意味で、僕の表現のコアな部分にある言葉」と語った須藤氏。10年前の夏、「将来的に政界進出なんて選択肢は?」と聞いた際、同氏は「そういったタイミングだったり、流れがあれば」と返答した。それが、ちょうど10年後の夏だった。(デイリースポーツ・北村泰介)