隻腕守護神の夢はW杯出場 元強豪校GK、アンプティサッカーで活躍

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右腕の一部を失った後、アンプティサッカーでゴールキーパーを続ける上野さん(大阪市・鶴見緑地球技場)
右腕の一部を失った後、アンプティサッカーでゴールキーパーを続ける上野さん(大阪市・鶴見緑地球技場)

 滋賀県の高校サッカーの強豪綾羽高(草津市)を昨春卒業したゴールキーパー(GK)が、就職直後の事故で右腕の一部を失いながらもゴールマウスに立ち続けている。活躍の舞台は、切断障害の人たちがプレーする「アンプティサッカー」。ワールドカップ(W杯)出場を夢見て関西のチームに所属し、残った左腕を使って好セーブを見せている。

 会社員の上野浩太郎さん(19)=甲良町=。昨年4月、勤務先の野洲市内の工場で機械に右腕を巻き込まれ、肘から下を失った。「入社して20日間働いて、給料日目前でした」と振り返る。

 リハビリをしていた兵庫県内の病院で、理学療法士からアンプティサッカーの存在を初めて聞いた。フィールドプレーヤーは下肢に障害のある人、GKは上肢に障害のある人が務める。「キーパーになれるスポーツがある。やりたい」

 サッカーを始めた小学3年からGKだった。高校にはスポーツ推薦で進み、3年時は全国高校総体県予選で準優勝したチームでベンチ入りした。昨年10月、アンプティサッカー日本代表選手が数多く所属する「関西セッチエストレーラス」に入り、翌月の日本選手権でデビューした。

 利き腕の一部を失ったため、右側に飛んでくるボールも反対の腕で止めなくてはいけない。「最初は戸惑ったけど、ゴールは少年サッカー用の大きさ。練習すれば左手も自然に出るようになった」と事も無げに話す。田中啓史主将(42)=京都市左京区=は「サッカー経験者なので指示が的確で声が出る。心強い」と信頼を置く。

 今月中旬、日本一を決める大会「コパ・アンプティ」が大阪市であり、チームは準優勝した。上野さんは特別ゴールキーパー賞に選ばれた。次回のW杯は3年後の予定。「もう一度真剣にサッカーをする楽しさを味わえ、心が躍っている。日本を代表する選手になる」と目を輝かせた。

≪アンプティサッカー≫

 1980年代に米国で生まれ、日本では2010年から普及が始まった。フィールドプレーヤーは義足を外し、「クラッチ」と呼ばれる2本のつえを支えに残った足で駆けボールを蹴る。7人制で国際大会の試合時間は前後半25分。日本の競技人口は100人ほどとされる。

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