高橋氏はその中でも「自身の分身」として「石崎君」を挙げた。「翼みたいな天才ではないが、自分の中では“陰の主役”。天才に生まれてこなかった、私を含めて多くの人たちの分身のような存在です」。石崎といえば、代名詞の“顔面ブロック”でシュートを止める、不器用で泥臭いDF。日本代表FW岡崎慎司が好きな選手として挙げている点も、ポジションは違えど、そのプレースタイルを通じて納得できる。
イベント後、高橋氏に確認したいことがあった。ここ2年でJ1には世界的なプレーヤーが3人も移籍した。その背景に「キャプテン翼」の影響があるかどうかについてだ。
今年、スペイン代表のアンドレス・イニエスタ(神戸)とフェルナンド・トーレス(鳥栖)が加入。昨年、神戸に入団した元ドイツ代表のルーカス・ポドルスキとともに、日本で現役のキャリアを積んでいる。3人の共通点は「キャプテン翼」を愛読してきたということ。同作を通じて、日本に対する興味や憧れを抱いていたことも、Jリーグに飛び込んだ一つの要因としてあるのではないか-。
そう見解を述べると、高橋氏は「そうです。うれしいですね」と否定や謙遜をすることなく、素直に受け止めた。メッシやネイマール、Cロナウドからも自伝作品のオファーがあったというほど、「キャプテン翼」を生み出した高橋氏は、世界のサッカー界からリスペクトされている。
連載開始から38年。高橋氏は「あと2年で60歳になるので、そろそろ人生を振り返ってもいいのかな」という思いで出版した自叙伝を手にした。少年時代に「ドカベン」から脇役キャラの面白さを学び、その表現世界をサッカーを通して開花させた同氏。今後もサッカーに軸足を置きながら新作を描き続ける。