おでんの東西格差は「ちくわぶ」と「コロ」に…「はぐれ刑事」元レギュラー俳優が指摘

北村 泰介 北村 泰介
おでんの具を大皿に盛り付けて出す店主で俳優の若林哲行=東京・高円寺
おでんの具を大皿に盛り付けて出す店主で俳優の若林哲行=東京・高円寺

 おでんを「関東煮」や「関東炊き」と呼ぶ関西ならではの具を尋ねると、若林は「コロでしょう」と即答した。コロとは鯨の皮脂肪。コラーゲンが豊富でプリプリしていて、鯨肉を家庭や学校給食で普通に食べていた時代は食卓にも上がっていた。関西でポピュラーなタコ足や牛筋串は関東でも普及してきたが、コロは専門店などでなければ、なかなかお目にかかれない。

 では、地域に関係なく、人気のある具は何か。若林は「やはり大根でしょう。その次が玉子かな」。大根と玉子が世代を超えて“2強”を形成する。若林は「出汁が染みているのがいいという方も、染みてない方がいいという方もいる。私はこんにゃくが煮詰まって硬くなったのが個人的に好きですが、こちらも出汁が染みてない方がいいという人もいて、いずれも個人差がありますね」と語る。

 開店して「15年以上」という。若林は「はぐれ刑事に出ていた頃です。(放送が)終わったらどうしようかと考えていた時に『飲食店で、素人でも、年を取ってからでも勝負できるのはおでん』と聞いて。出汁をとっておけば、大根と玉子以外、練り物や豆腐などをそのまま入れておけばいい。おでんは寒い季節。11月に始めた。翌年の夏が暇でダメならつぶれてもいいやと思っていたが、その年が冷夏で、お客さんが途絶えなかった。それで続けられたようなものです」と振り返る。

 さらに「格式が高い店は一品が300~400円。うちはめんどくさいから全部150円。変わり種の具もありません。安いから週に5~6日来る常連さんがいます」という。

 おでんといえば屋台のイメージだが、近年はめっきり減った。若林は「寂しいですね。高円寺駅北口で、蝶ネクタイをして粋で品のあるおじさんが屋台をやっていた。若い人の相談にも乗っておられましたが、ある時からいなくなってね。私も、あのおじさんの境地まで行ければいいけど、なかなかなり切れなくて」と懐かしむ。

 おでんの具を役者に例えると?「主役はいないですね。華やかでもないし、みんな地味な脇役ですよ」。店主は、自身の役者人生を、おでんに重ねた。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース