ダンゴムシから学ぶ「異質なものこそ仲間」駆除だけでなく、共生も

北村 泰介 北村 泰介

 梅雨の季節がやって来た。ダンゴムシが多く見られる時期の到来だ。ヤフー検索の調べによると、今の時期にその関連ワードを検索するユーザーが増えるという。ダンゴムシは自然界の分解者として“益虫”である半面、農作物の一部を食べるという点で“害虫”として駆除の対象ともなっている。その対策とともに、ダンゴムシを通して学ぶべきことはないかも探った。

 子どもはダンゴムシが好きだ。庭や公園などの少しジメッとした場所で土遊びをしていると、うじゃうじゃ沸いてくる。ムシと言っても虫ではなく、エビやカニと同じ甲殻類。つついて、くるりと丸くなる姿を面白がった記憶があるだろう。

 そんな体験から“ダンゴムシとの共生”を考えたくなったのだが、そうもいかない事情がある。農作物の新芽や花なども食べるため、農業や園芸に携わる人にとっては困った存在となるからだ。枯れ葉などを食べて土壌を豊かにしてくれるが、その見た目から「不快害虫」とされる。

 駆除の方法としては、市販の殺虫剤(スプレーや散布型)がある。また“殺生”を避けるために、庭の土中に空き缶を埋めて落とし穴とし、そこに落ちたダンゴムシを公園などで放すことも。それ以前に、ダンゴムシが好む環境をなくす予防策を考えるべきだろう。ダンゴムシは乾燥した環境が苦手なため、湿った土を除いて乾いた土に入れ替え、落ち葉を取り除くことで、その場からいなくなる。

 そんなダンゴムシを研究している人がいる。「ダンゴムシに心はあるのか 新しい心の科学」(PHP研究所)の著者で、信州大准教授の森山徹氏だ。森山氏は神戸大学大学院の博士課程に進んだ時からダンゴムシを使った研究を始めた。

 著書で「ダンゴムシの心を探るためにまず必要なのは、彼らととことん付き合うことでした」と記す森山氏。多重T字迷路、水包囲アリーナ、環状通路などを使った実験を通し、その行動を粘り強く観察した結果、個体差はあるとはいえ、常識では考えられない「とっぴな行動」を引き出すことに成功。大脳がないダンゴムシにも心があると確信した。

 森山氏はデイリースポーツの取材に対して「ダンゴムシから学んだのは、あらゆるものに心があるということです。人間は自分と異質なものを駆除したいという心理を働かせがちです。しかし、あらゆるものに心があると知れば、異質なものこそ、新たな仲間だと思えるはずです。『平和』とは、この仲間の輪が自然に広がることだと、私は考えています」とコメント。「ものに心があると知ることは『平和』への最短ルート。無用な差別のない平和な世界を作れるでしょう」とした。

 ダンゴムシの研究から導き出された「異質なものこそ、新しい仲間」という考え方。それは人間界にも適用されるべきだろう。

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