ネット売買される「リユース制服」“ルーズソックス世代”の母親も息子の制服を出品

北村 泰介 北村 泰介

 高級ブランド「アルマーニ」デザインの約8万円の“標準服”を東京・銀座の中央区立泰明小学校が導入するというニュースは大きな話題となり、各方面で物議を醸した。学校の「制服」が例年になくクローズアップされている新年度の入学式を前に、制服事情やその対応策を探った。

 公正取引委員会事務総局が昨年11月に発表した「公立中学校における制服の取引実態に関する調査報告書」によると、制服の平均販売価格は男子用ブレザーで3万3122円。10年で約5000円も値上がりしている。

 家計の負担を減らしたいという思いから生まれたのが「リユース(再利用)制服」だ。福岡県では古賀市教育委員会が不要になった中学校高校の制服を預かって必要な人に譲り、栃木県では「足利市制服リサイクルバンク」が行政の取り組みとして続けられている。

 だが、そうした地域やリユース専門店も限られているため、ウェブサイトでの情報交換のニーズが高まる。2011年オープンのウェブ掲示板サービス「ジモティー」では都道府県、市町村別に分けて不要品の譲渡情報などを掲載し、月間約750万人が利用。制服は男性用と幼児用(8歳以下)のみ出品。17年は1月~3月で約500件で、18年も昨年度を上回るペースだ。

 利用者に聞いた。

 神奈川県在住の35歳専業主婦は息子が着ていた県立高校の制服を今春入学する生徒の母親に5000円で譲った。「トータルで4万円ほどしたブレザーの制服です。捨てるのがもったいないと思いました」と振り返る。

 現在35歳の女性といえば“コギャル”文化が広がった1990年代後半に中高生時代を過ごした世代。「ルーズソックスがはやっていた頃ですね。周りの友達は先輩から制服を譲ってもらったり、後輩にあげたりしていました」と、当時から制服の譲渡が身に付いていたことを明かした。

 滋賀県在住の45歳専業主婦は県立高校に入学する次男の制服を卒業生の父親から購入した。ブレザー(1万9000円)、カッターシャツ(3000円×2枚)、ベスト(6000円)などで計6000円(カッコ内は新品価格)。トータルで3万円を超える出費を5分の1以下に抑えられた。「長男が大学に進学するタイミングで次男が高校に入学することになり、節約したかった。長男の高校は詰め襟でおさがりできなかった」と語る。

 制服を「青春」のシンボルとして大切にし、新品を買って卒業後も保存するスタイルは大いにありだが、後に続く人に格安で譲って活用してもらう姿勢も合理的。制服代を負担に感じる家庭では「リユース制服」が解決策の1つになっている。

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