「ドラム缶」や「ハイボール60円」の背景とは~「価格破壊」進む酒場は今

北村 泰介 北村 泰介

 近年、酒場でも“価格破壊”の動きが続いている。都内をハシゴして実態を探った。

 東京・銀座に“日本一安い立ち飲み居酒屋”をコンセプトとする「ドラム缶」の本店がある。高級クラブの入ったビルの向かいに出現した“せんべろ”の店だ。チャージがない上に、ドリンク150円、つまみ50円からという安さにこだわった店内では、テーブル代わりのドラム缶を囲んで客が肩を寄せ合う。

 2016年5月以降、東京に9店舗、関西では昨年の大阪・京橋店に続いて今年3月には通算11店舗目の神戸・三宮店をオープン。運営会社の竹下大介代表取締役は「18年末までに30店舗、19年に100店舗を目指す体制を整えたい」と意欲を燃やす。“快進撃”の要因は何か。銀座本店の常連客に聞いた。

 「週4~6回来ます。1人で来ても常連さんとイチゲンさんがすぐ仲良くなれる雰囲気がいい」と語る46歳の男性会社員。大阪出身の26歳会社員は「勤務先の川崎から浦安の家に帰る途中の平日夜と土日の休みも入れて週8回のヘビーユーザー。神田など他のチェーン店にも寄るし、銀座店も1回店を出てからまた戻ったり。そんなこんなで“週8”ですよ!」と笑った。

 銀座本店の藤田克典店長は「ドラム缶を360度囲むのでお客さん同士の距離が近い。カップルになる人もいます」と解説した。

 東京・港区のJR田町駅近く、慶大キャンパスもあるオフィス街のビル3階で「ジョニーの原価酒場」は今年1月に開店。「ハイボール60円」など、メニュー全てが原価という点がポイントだ。3月時点で、生ビール150円、フードでは名物「こぼれいくら丼」(999円)が最高値で、大半のメニューは200~300円台。どう採算を取るのか。

 運営会社の竹川哲治社長は「来店時に1500円の『入店料』をいただいています。それが店の運営費となり、原価にこだわれる。高級ワインやウイスキー、和牛のローストビーフといった高価な物もよりお得に、安い物はたくさん食べて飲むとよりお得になります」と指摘。安価な酒に対して「頭が痛くなるからやめとく」という“安すぎて不安な人”もいたが、本物の味に納得すると常連になったという。竹川社長は「今後も原価でやっていきたい」とチェーン店化を視野に入れる。

 前者ではコミュニケーションの場としての集客力と回転率。後者では原価にこだわる姿勢。「安さ」だけではない付加価値が、リピーターを引き付けている。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース