廃校の小学校で開店「むらキャバ」 テクノ音楽に体揺らすおばちゃん、村の消滅回避へ奇策

京都新聞社 京都新聞社
南山城村で開かれた「むらキャバ」(コラージュ)
南山城村で開かれた「むらキャバ」(コラージュ)

 テクノ音楽に合わせて地元の「おばちゃん」が体を揺らし、女装したドラァグクイーンがパフォーマンスを披露する。過疎高齢化が進む京都府南山城村。静かな農山村のイメージとはかけ離れたイベントが始まって5年になる。

 その名も「むらキャバ」。廃校した小学校の講堂で開催されるキャバレースタイルのショーだ。企画したのは、主婦や村の主要産業を担う茶農家の有志たち。世界で活動する音楽グループのメンバーだった里ロビンさん(35)が創作拠点を求め、2010年に親の土地がある村に仲間と移住し、小さなコンサートを開いていたことがきっかけとなった。「楽しいことを自然にやっていたら仲間が増えていった感じ」。ショーで音楽を披露したロビンさんは振り返る。

 村には昔からの生活を守り続ける地域もある。前衛的な内容に加え、廃校で酒を提供したことから否定的な意見もあったが、村外からも多くの人が駆け付けたイベントは全国の注目を集めた。「普通じゃ面白くない。寂しくなった村の人口を増やそうと始めたけれど、むらキャバが好きで移住してきた人もいた。やって良かった」。中心メンバーのパート田中恵子さん(35)は、今年の開催も計画する。

 「村人が企画し、移住者がパフォーマンスをする。住民が主体となり、村の歴史が動いた」。村職員時代に移住促進を担当し、新たな地域活性化拠点として17年に開業した道の駅「お茶の京都 みなみやましろ村」の社長に転身した森本健次さん(51)は振り返る。

 村には危機感がある。1995年に4千人だった人口は減り続け2800人足らずに。65歳以上の割合は4割超に達する。「2040年までに全国の半数にあたる896の自治体が消滅する可能性がある」とした民間団体の推計で、全国17番目の消滅候補に挙げられたことも衝撃を与えた。

 本格的な人口減少時代を迎え、地域の活力や支え合う機能をどう維持するかは大きな課題だ。国の調査で、65歳以上の高齢者が住民の半数以上を占める集落は、全国で1万5千カ所(15年時点)を超えた。京都府内では少なくとも209カ所、滋賀県内でも27カ所を数える。今後、いわゆる「限界集落」が増えていくのは必至だ。

 各自治体は空き家バンクを整備し、「週末居住」や「2地域居住」などを含めた交流人口の増加などに活路を見いだす。「大事なのは人口の多い少ないではない。助け合える人間関係や集落機能をどう維持していくかだ」。村の起爆剤となったロビンさんが作ったテーマソングが流れる道の駅で、森本さんは力説する。

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