大丸神戸店が大人の秘密基地をつくった理由

山本 智行 山本 智行
 大人の秘密基地「M BASE」
 大人の秘密基地「M BASE」

 生存競争の激しい百貨店業界。あの手、この手のアイデアが生み出されている中、JFRグループの大丸神戸店(神戸元町)が紳士服売り場のイメージを一新するユニークな“勝負手”を打った。従来の客層の中心だった50~60代に加え、40代も呼び込もうと大人の秘密基地「M BASE」を提案。昨年10月7日のオープン以降、ちょっとした評判を呼んでいる。合い言葉は「秘密基地で遊ぼう」だ。

 大丸神戸店のメンズフロアがおしゃれになったらしい。そんなウワサを聞き、訪ねてみると納得がいった。6Fエスカレーターを降りて真正面。フロアのど真ん中に“大人の秘密基地”をコンセプトにした「M BASE」が誕生し、小粋な空間が広がっていた。

 「地元で人気のセレクトショップに参加していただき、これまでと違った雰囲気を演出しようという試みです。ターゲットは40代」

 大丸神戸店のメンズフロアにとっては1995年の阪神大震災以降、初めてとなる大胆なリニューアル。その柱となる「M BASE」の仕掛人の一人、大丸神戸店の手塚真里子さんも手応えを口にした。

 「喫茶コーナーではワークショップや音楽、トークイベントを開催。地元とのつながりを大切にし、地元の魅力を発信してきました。若返りをはかりながら年配の方にも楽しんでもらえるように、との思いです」

 その核として神戸を代表するセレクトショップ「LANTIKI」が参加。そのまた中心部に老舗カフェ「英國屋」とコラボした「M BASE BAR」が鎮座するという斬新なレイアウトだ。しきりのない店内には本棚があり、ゆったりとくつろげるスペース。コーヒーやクラフトビールの他に地元有名店のスイーツなども楽しむことができるため、意外に若い女性客が目立つ。体験型のイベントはすでに6月分まで進行中で「M BASE」の心意気に乗った英國屋グループの神戸エリアを管理運営する(株)ミカドの小川嘉之専務取締役(45)も「違う業種であってもフロア全体で連携しようという、これまでの百貨店にない考え方。モノを売るのではなく、時間や空間、体験などのコトを売る。それが私たちの思いとも合致した」と熱く語ってくれた。

 そもそも、この「M BASE」は神戸元町生まれで歴史ある貿易会社の6代目「Mr.M」がつくった秘密基地という設定。港近くに愛車のガレージがほしいと考えていたところ、おじいさんが持っていた古い倉庫をたまたま発見、それをリニューアルし、友人、知人に開放したという流れ。もちろん「M」は真里子のMではなく元町の頭文字から取ったもので、おしゃれな43歳がお気に入りのファッション、ライフスタイルなどを提案、そこに仲間が集まって来るというストーリーだ。

 人は職場でも家庭でもない第3の居場が必要だと言われる。それは老いも若きも関係ない。「ここがサードプレイスになってくれれば」と手塚さん。特にいまの60代はファッション雑誌「GG」にみられるようにシルバー世代という響きを嫌うと言われており、この「M BASE」が世代を超えたおしゃれなメンズの新たな交流の場所として根づいて行きそうだ。

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