実母の「認知症」と「夫婦の絆」語る 映画「ぼけますから、よろしくお願いします」の信友監督

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自らの両親を題材にドキュメンタリー映画を作った信友監督
自らの両親を題材にドキュメンタリー映画を作った信友監督

 「ずっと我が家では父の存在が薄かったんですが、母がこうなったことで父のいいところがたくさん見つかった。この年齢でここまで頑張っている人はなかなかいないんじゃないか、意外に妻思いのいい夫だなって思いました。娘の私でさえも入り込めない夫婦の絆のようなものを感じて感動しました。母の認知症で、いろんなことに気づけました」

 映画の中では介護ヘルパーの訪問を受けるシーンもある。「家族だけで何とかしようとするのではなく、プロの介護の方とシェアする大切さももっと知ってもらえれば。例えば入浴にしても、研修を受けているヘルパーさんに入浴させてもらった方が本人も気持ちがいいんです」。

 認知症の家族を客観的な目で見ることも大切だと語る。「絶望的になった母から『どこかに捨ててほしい』『殺してほしい』と言われ、一緒に泣いたこともありました。でも、次の日、母はそんなことを言ったことも覚えてなくて『なんでアンタ、泣いてるの?』と。周りの家族はそういう波についつい翻弄(ほんろう)されてしまいがちなんですけど、私はカメラを回すことで一歩引いた目で母を見ることができた。娘としてずっと接していたら煮詰まってしまって、母のことが嫌いになっていたかもしれません」。

 先行上映した東京の劇場では連日、満員だった。「上映後、皆さんから『気持ちがすっきりした』『また明日から前向きに頑張っていける』という言葉をいただきました。私と同じような立場にある方にとっては、デトックス(体内にたまった有害な毒物を排出させること)の映画だと思って見ていただけたらと思います」。

 現在、母は89歳、父は98歳になった。今年9月、母は脳梗塞を発症して入院、父は毎日病院に通って付き添っている。これからも続く夫婦の絆。老いとは何か、家族とは何かを問いかける作品に仕上がっている。(デイリースポーツ・工藤直樹)

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