「故人宛て郵便物なぜ転送できない?」 郵便局の対応に遺族困惑

京都新聞社 京都新聞社
故人宛て郵便物は転送できない
故人宛て郵便物は転送できない

 日本郵便に故人宛ての郵便物を転送できない理由を尋ねた。同社広報室は「郵便物は、送達されるまでは差出人に所有権があるからです」と回答。宛先の人物が亡くなっていると判明した場合は、差出人に郵便物を返還する決まりになっているという。同社ホームページの「よくあるご質問・お問い合わせ」のコーナーにも、同様の説明が載っている。

 各地の郵便局では、配達先の居住状況を必要に応じて確認しているが、居住者が亡くなった後もその事実が確認できない限り、自宅に郵便物を届け続けることはあるという。一方で規定を見直す予定もないとしている。

 中村さんの祖父のように、特別養護老人ホームや有料老人ホームの入所者が亡くなった後に郵便物が届いた際、施設はどう対処しているのか。

 長岡京市で特養ホーム「天神の杜」を運営する社会福祉法人の五十棲(いそずみ)恒夫理事長は「特養ホームに住民票を移す利用者は少数派なので事例はあまりない」としたうえで、「利用者が亡くなった後も遺族の希望があれば、施設に届いた郵便物を送っている」と話す。

 他の京都市内の施設では「利用者の了承を得て、重要な郵便物は生前のうちから親族ら身元引受人に送られるよう手続きしている」「利用者の死後に郵便物が届くと、宛先の人物がいないことを郵便局員に説明し、引き取ってもらっている」といった事例があった。対応はまちまちのようだ。

 1人暮らしの人が亡くなった場合も、同様の問題は起こり得る。空き家になると郵便物が回収されないままになるおそれがある。郵便受けからはみ出していると放火のリスクになるほか、役所から納税通知書が届いていることに気づかず、相続人が延滞金を負担しなくてはならない場合もある。亀岡市内で空き家の見回りや郵便物の管理を請け負っているNPO法人「ウエルス」(同市)の風早浩一代表理事は「管理を頼まれた物件に最初に訪れた時、郵便物がたまっていることは多い」と打ち明ける。

 そうした事態を避けるにはどうすべきか。風早代表理事は「役所に死亡届を出す際に必要な手続きを一度に済ませるのがいい」と助言する。たとえば、税務の担当課で納税義務を引き継ぐ相続人になったことを届け出たり、国民年金や国民健康保険などの窓口に資格喪失届を出したりすることが挙げられる。「空き家管理サービスを手がける事業者に郵便物の回収や発送を頼むのも方法」という。

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