そもそも忘れ物なのか、捨てられたのかの判別ができない物も多いという。同ホテルでは担当者がリストを作成し、食品以外の物は3カ月間保管しているが、倉庫(約8平方メートル)は常に満杯の状態という。中村誠志総支配人(46)は「リストを作るだけでも大変な労力」と話す。
ホテル側に金銭的な負担が発生するケースも。「ザ ロイヤルパークホテル京都四条」(下京区)では、今年4月の開業後、スーツケースの忘れ物が既に6点もあった。スーツケースは捨てる際、産業廃棄物扱いになり、処分業者への委託料として1立方メートル当たり1万8千円かかるという。「中身は空のものばかりなので、わざと置いて帰ったのかもしれません」と川口泰宜支配人(46)は戸惑いの表情も見せる。
チェックアウト時に忘れ物がないか確認してもらうための対策を講じることはできないのか。外国人客の忘れ物が1日に10~30点に上るという「リーガロイヤルホテル京都」(下京区)のコンシェルジュ山口典子さん(58)は「お客さまは非日常を楽しみにしている。客室の扉に『忘れ物はありませんか?』との紙でも張ろうものなら、せっかくの雰囲気を壊しかねません」と慎重な姿勢を示す。
大阪市の物流管理会社「オー・エス・エス」は昨年10月から、宿泊施設を対象に忘れ物などの発送業務を請け負うサービスを始めた。費用は施設側には求めず、客側に請求する仕組みで、1件当たりの利用料は平均約5700円という。全国980のホテルや旅館などと契約し、好評を得ているという。荒本修一社長(69)は「忘れ物をきちんと返すことはお客さまへのおもてなしにもなる」と強調する。