広島、中日、楽天で通算22年間、活躍した紀藤真琴さん(53)が今年1月、茨城県水戸市の水戸啓明高の野球部監督に就任した。
水戸市郊外にある水戸啓明高のグラウンド。夕方、授業を終えた選手が次々と集まってくる。紀藤監督は1人1人に目を配り、体調不調で練習を休んだ選手がいると聞けば、「心配だね」と顔を曇らせる。練習中は鋭い視線をグラウンドに送り、ミスした選手に「めまいがするわ」と苦笑い。いい緊張感の中で選手はキビキビと練習に打ち込んでいた。
「今の高校生は本当に真面目。僕らが高校の頃はうっすらとヒゲがはえたやつとか、襟が高くて丈の長い学ランを着たバンカラなやつが多かった。自分もそり込み入れて、ケンカ腰で野球やってましたよ(笑)。ただ、今の子はいろんな情報を得やすくなった分、頭でっかちが多い。間違ったことも正しいと思ってしまうから、そういうところは僕がしっかりと指導していかないといけない」
中京高時代は3度の甲子園出場を果たし、1983年度のドラフト3位で広島に入団。94年から3年連続2桁勝利を挙げた。中日、楽天にも在籍し、05年の引退後は楽天投手コーチとして岩隈久志や田中将大らを指導。台湾球界でもコーチを務めた。5年前に水戸市でアマチュア向けの野球塾「紀藤塾」を立ち上げ、小中高生を指導するなど豊富なキャリアの持ち主だ。
昨年、水戸啓明高から監督就任の打診を受け、今年1月から指揮を執っている。同高は12年に校名を水戸短大付から変更。96年夏と02年春に甲子園に出場しており、OBには広島・会沢らがいる。近年は常総学院、明秀学園日立などの強豪校の壁に阻まれ、甲子園から遠ざかっている。
「目標は甲子園。やるからには目標は大きい方がいい。幸い、自分はあこがれの舞台に立つことができた。子供たちにもその夢をかなえてあげたい」。だが、そのために勝利至上主義の野球をやるつもりはない。「自分の役目はこの子たちに野球の楽しさを教えていくこと。そして一番大切なのは将来、大学や社会人、あるいはプロの世界に進むにしても、それまでに肩ヒジなど体を壊したりしないように、伸びしろを残して上の舞台に行かせてあげることだと思っている」と話す。