地方都市で夫と高校生の娘と暮らす52歳の会社員・山本けいこさん(仮名)。車で1時間半ほど離れた実家には、78歳の母が一人で暮らしています。母とは電話で定期的に話していますが、仕事や家庭があり、頻繁に実家へ行くことはできません。
ある日、母から「この前、親切な人が来てくれてね」と聞いたけいこさん。詳しく話を聞くと、訪問販売や勧誘で来た人を何度か家に上げ、必要のない商品まで契約していたことが分かりました。以前はこのようなことがなかったため、けいこさんは「知らない人を簡単に家に上げてしまって大丈夫なのだろうか。母の生活に何か変化があるのでは」と心配になりました。
離れて暮らす親の気になる変化に気付いたとき、家族は何を確認し、どこへ相談すればよいのでしょうか。
知らない人を家に上げた理由や、生活の変化を確認する
知らない人を家に上げたからといって、すぐに本人の判断力が低下したと考えるのは避けましょう。訪問者を信用したり、勧誘を断りきれなかったりする場合もあります。
まずは、訪問者を家に上げた理由や、そのときの状況を本人に確認しましょう。どのような人が訪ねてきたのか、訪問の頻度や商品を購入した経緯なども、本人を責めずに話を聞くことが大切です。
あわせて、買い物や金銭管理、食事、通院、服薬、電話や郵便物への対応など、以前と比べて変化したことがないかも確かめてください。
家族が離れて暮らしている場合、電話だけでは分かりにくい変化もあります。契約のことだけでなく、普段の暮らしで困っていることがないか、本人の話を聞きながら確認していきましょう。
なお、訪問販売などで不要な契約をしていた場合は、契約書や領収書などを確認し、早めに消費生活センターへ相談しましょう。消費者ホットライン「188」から最寄りの消費生活相談窓口を案内してもらえます。訪問販売では、契約内容などによってクーリング・オフができる場合もあります。
「最近、様子が違う」と感じたら地域包括支援センターへ
知らない人を家に上げるようになるなど、離れて暮らす親の生活に気になる変化が見られた場合は、親が暮らす自治体(地域)の地域包括支援センターへの相談も検討しましょう。
地域包括支援センターは、高齢者の介護や生活上の困りごとなどについて相談できる地域の窓口です。高齢者本人だけでなく、家族からの相談も受け付けています。
相談の際には、訪問販売の契約だけを伝えるのではなく、「最近、知らない人を家に上げるようになった」「以前は断っていた勧誘を受け入れるようになった」など、気になる出来事を具体的に伝えるのがポイントです。必要に応じて、本人の生活状況に合った地域の見守りや、生活支援などにつながる可能性もあります。
どの程度の見守りが必要なのか、本人の意向を確認しながら、支援の内容を考えることが大切です。
離れて暮らす家族ができる見守りとは
家族が離れて暮らしている場合、日常の様子をすべて把握することは難しいものです。まずは本人と相談しながら、電話で連絡を取り合う頻度や、困ったときの連絡先を決めておきましょう。
また、自治体によっては、地域の住民や民生委員、協力事業者などが高齢者の異変に気付いた際、関係機関につなぐ見守り活動を行っています。地域包括支援センターなどで、住んでいる地域にどのような取り組みがあるか確認してみましょう。
見知らぬ人が訪ねてきた場合の対応についても、本人と話し合っておくことが大切です。訪問者の話を聞くために無理に家へ上げる必要はなく、契約を急がず家族などに相談する方法もあります。
本人の意向を尊重しながら、家族だけで抱え込まない見守り方を考えていきましょう。
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母が訪問販売で不要な商品を契約していたことを知ったけいこさんは、契約について消費生活センターに相談するとともに、母の生活全体について、地域包括支援センターにも相談しました。
地域包括支援センターの相談員に、訪問販売だけでなく、最近の母の生活の様子や、離れて暮らしているため、頻繁には訪問できないことを伝えました。相談員からは、地域で利用できる見守りの取り組みについて案内を受けました。けいこさんは母とも話し合い、これまでの電話での連絡に加え、知らない人が訪ねてきたときは、すぐに家へ上げたり契約したりせず、家族に相談することを決めました。
また、今後も母の生活に気になる変化があれば、地域包括支援センターに相談することにしました。けいこさんは、母の意向を尊重しながら、離れていてもできる見守りを続けていくつもりです。
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。