都心のマンションに一人で暮らす会社員の小林まいこさん(41歳・仮名)は、地方都市で一人暮らしを続ける82歳の母のことが気になっています。3年前に父を亡くしてから、母は自宅で一人暮らしを続けてきました。
今年のお盆に帰省したまいこさんは、勝手口にごみ袋がいくつも積まれていることに気づきました。母に聞くと、半年ほど前にひざを痛めてから、収集所まで袋を運ぶのがつらくなり、分別にも思いのほか時間がかかるようになったといいます。収集所は自宅から徒歩5分ほどですが、途中に上り坂があり、収集日の朝に間に合わないことが増えていました。
母は今のところ、食事や身の回りのことは自分でできていて、要介護認定は受けていません。それでも、このままでは一人暮らしを続けにくくなるのではないかと、まいこさんは不安を感じました。
ごみ出しのような日常の負担に対し、離れて暮らす家族が活用できる地域の支援体制を確認します。
ごみ出しの苦労はSOSのサイン?まず確認したい「親の生活状況」
ごみ出しの負担は、足腰の衰えなど体の変化から生じている場合があります。まずはごみ出しにかぎらず、買い物や通院、掃除など、ほかの場面でも困りごとが出ていないかを確認することが助けになります。
こうした相談は、住んでいる市町村が設置する地域包括支援センターで受け付けています。地域包括支援センターは、高齢者の総合相談や介護予防の援助などを行い、高齢者の保健医療の向上と福祉の増進を包括的に支えることを目的とした機関です。
厚生労働省は、本人だけでなく、家族や周りの人が気づいた困りごとについても相談できる窓口として、地域包括支援センターなどを案内しています。要介護認定を受けていない場合でも相談できます。
遠距離家族の頼れる窓口。「地域包括支援センター」から広がる支援
高齢者の困りごとは、まずは地域包括支援センターに相談しましょう。
▼担当者が電話や訪問で状況を確認し、必要な支援につなぐ
地域包括支援センターに連絡すると、職員が電話や訪問で本人の暮らしの状況を確認します。足腰の状態や困っていることを聞き取り、必要に応じて自治体のごみ出し支援や介護保険サービスなど、その地域で利用できる支援につないでもらえます。
▼要介護認定がなくても利用できる?自治体独自の「ごみ出し支援」
自治体によっては、高齢者などごみ出しが難しい人を対象に、ごみの戸別収集などの支援制度を設けています。環境省の手引きでは、玄関先などから職員が直接ごみを収集する方法や、地域の自治会やNPOが声をかけながら収集を手伝う方法など、複数のやり方が紹介されています。
対象となる年齢や世帯構成、要介護認定の状況などの条件は、市町村によって異なります。実施していない地域もあるため、利用できるかどうかは地域包括支援センターや、自治体の担当窓口で確認する必要があります。
▼要介護認定があれば、訪問介護(ホームヘルパー)で対応できる場合も
要介護認定を受ければ、訪問介護のホームヘルパーが行う生活援助の中で、ごみ出しの支援を受けられる場合があります。厚生労働省は、生活援助に含まれる行為の一つとして、ごみ出しを挙げています。
要介護認定を受けていない場合も、まずは地域包括支援センターに相談してみましょう。本人の生活状況や困りごとを確認したうえで、自治体独自のごみ出し支援など利用できるサービスを検討し、必要に応じて要介護認定の申請につなげることもあります。
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まいこさんは帰省後、地域包括支援センターに電話し、母の様子を伝えました。数日後、職員が母の自宅を訪ね、ごみ出し以外の困りごとがないかも含めて話を聞きました。
その結果、母が住む市には、要介護認定がなくても一定の条件を満たせば利用できるごみ出し支援があることが分かり、申し込みました。収集の担当者が声をかけながらごみを引き取ってくれるようになり、家の中に袋がたまることはなくなりました。職員からは今後、足腰の状態が変わってきた場合に備えて、要介護認定の申請についても説明を受けました。
「元気そうに見えても、日々のごみ捨てがこんなに重労働だったとは気づきませんでした」と、まいこさんは話しています。あの日の違和感に気づけたことが、結果的に母の生活を支える支援へとつながりました。母は今も一人暮らしを続けながら、必要な支援を受けています。
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。