怪談話や霊体験など、身の毛もよだつ怖い話は数多くあります。しかし、本当に恐ろしいのは、人の怨念なのかもしれません。そんなゾッとする創作ホラー漫画『しつこいて』(作:佐海瞑一さん)がSNSで注目されています。
物語は、テレビの怪談番組を見ている幼い孫と祖母の、たわいない会話から始まります。「ねえ、ばあちゃん。幽霊なんてほんとにおるん?」と尋ねる孫に、祖母は「おるでえ、人間は肉体が死んだら霊になるんや」と答えました。
左足をひざ下から失っている祖母は、「ばあちゃんの失くした足もな、霊になって今もあるって分かるねん」と話します。孫がそれは幻肢痛だと答えると、祖母は「ほんまやで、写真に写ったこともあるんよ」と1枚の写真を取り出します。
車イスに座ってほほ笑む祖母。その写真には、失ったはずの左足がうっすらと写っていたのです。孫は「ばあちゃんの足の心霊写真やあ!」と大興奮します。
すると祖母は、左足を失った戦時中の出来事を語り始めます。当時、若い娘だった祖母は近所の男性からしつこく言い寄られていました。怖くて断ると男性は激高し、ナタを持って襲いかかってきたのです。逃げる途中で倒れた祖母は男性に足首を掴まれます。そのとき、空からの爆撃がちょうど男性に直撃するのでした。これによって男性は亡くなり、祖母は左足を失ってしまいます。
祖母は命は助かったものの、失った足の痛みに長く苦しめられました。それでも結婚し、子どもや孫にも恵まれ、「トラウマに負けへんかったぞ」と思えた頃、あの写真が撮れたのだといいます。
その話を聞いた孫は、写真をもう一度よく見ます。するとそこには、うっすら写る左足首を5本の指がしっかりと掴んでいたのです。
青ざめる孫をよそに、祖母の「ほんま死んでもしつこい男やわ」とつぶやくのでした。
読者からは「天才的なタイトル…!!」や「最後で怖すぎた」といった声があがっています。そんな同作について作者の佐海瞑一さんに話を聞きました。
最後のページであらわになる亡霊の嫌な執念に一点集中
―同作を描いたきっかけや発想元になった出来事があれば教えてください。
子供のころ幻肢痛について知った時、もしかして脳の錯覚ではなくて自分の形をした霊魂というものがあって、手足を失くしてなおそこにある霊魂と、その無念のようなものを感じているのではないかな?と思ったことがずっと残っていて、それが本作の発想の元になりました。
―タイトルに込められた思いがありましたら教えてください。
もともと、関西弁で語られる漫画なので関西弁のタイトルをつけたいと思っていました。
関西の人がこの話を読んだ後に何かツッコミを入れるなら「いやしつこいて!」とか「しつこいねん!」などになるはずと考え、悩んだ末に、手が肝のホラーであること、関西圏以外の人も違和感なく読めるものをという理由から「手」とかけられる「しつこいて」の方を採用しました。
また、関西人のツッコミには突っ込む動作がついてきますから、その動作でこのお話の恐怖をベシーンと振り払ってもらえればいいなという思いも込められています。
―作品の怖さを演出するうえで、特に意識された点を教えてください。
この作品は1人の女性の人生を変えてしまった非常におぞましい体験談のホラーなのですが、作中では祖母はまだ小さい子供相手に喋っているのですから、襲われるシーンや本当に苦悩したであろう人生のシーンはあえてあっさり描写して怖くなりすぎないようにし、孫(と読者さん)が最後のページであらわになる亡霊の嫌な執念に一点集中して恐怖できるようにしました。
<佐海瞑一さん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/shindelmegami
▽pixiv
https://www.pixiv.net/users/5320803
▽電子書籍『それでも彼女は悪を征く』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BC2D6BYV
▽電子書籍『しき 怪異聞歓談』(Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/B08XTYBHPP