東京都在住のFさん(30代)は、隣町に住む義理の妹から、夏休み中のあるお願いをされました。旅行に出かける間、子どもたちが学校から持ち帰ったホウセンカとアサガオの水やりをしてほしいというのです。
実はFさんも以前、帰省する際に子どもの植木鉢を義妹に預かってもらったことがあります。 「お互いさま」と思い、快く引き受けました。
ところが、その後に思いがけないお願いが追加されました。
「あと、クワガタとカブトムシも…」
「ノコギリクワガタとカブトムシも預かってもらえないかな」
義妹によると、世話は難しくないそうです。涼しい室内に置き、1日1回、昆虫ゼリーを入れるだけ。「生死は問わないから」とも言われたといいます。
しかし、Fさんにとっては簡単なことではありませんでした。
これまで昆虫を飼育した経験はなく、そもそも虫が苦手です。自宅のベランダにセミが死んでいるだけでも、自分ではどうすることもできず、夫に片づけてもらうほどです。
夫にお願いしても良いのですが、夫は出張が多く自宅にいる時間が少ないのです。Fさんの頭に浮かんだのは、夜の光景でした。
静まり返った部屋で、飼育ケースから「ガサガサ、ワサワサ」と音がする。恐る恐る見てみると、ノコギリクワガタとカブトムシが元気に動き回っている――。
「考えただけで寒気がしました」
植物なら水をやれば済みますが、生きた昆虫となると心理的なハードルがまったく違います。
「2匹だけ」でも、苦手な人には大問題
Fさんは悩んだ末、丁重に断りました。
「植物のお世話はできるけど、虫はどうしても苦手なの。ごめんね」
その後、義妹は別の預け先を探し、カブトムシの飼育経験がある旦那さんのいる友人宅に預けることが決まったそうです。
Fさん自身も、無事に預け先が見つかってホッとしました。
「カブトムシとクワガタは、世話自体は簡単だそうです。でも、虫が平気な人にとっての『2匹だけ』と、苦手な人にとっての『2匹だけ』は全然違いますよね」
以前、植木鉢を預かってもらった経験があるだけに、Fさんには「今度は自分が」という気持ちもありました。それでも、苦手なものまで無理に引き受けることはできません。
Fさんにとっては、思わぬところで「恩返し」の難易度が一気に上がった夏休みでした。