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お客さんが汚い道を通るのは嫌…87歳父が洋菓子店の周りをごみ拾い ワイシャツ姿で週1~2回 小さな清掃が育てる感謝のかたち

渡辺 晴子 渡辺 晴子

道路脇で、ワイシャツにスラックス姿の男性が黙々とごみを拾っています。男性は87歳。近くで洋菓子店を営む娘家族を思い、今も週に1、2回ほど店の周辺を清掃しているといいます。

「なかなかできることではない」「お父さまは誇りですね」

その姿を紹介したInstagramの投稿には、男性の行動をたたえる声とともに、交通事故や熱中症を心配するコメントが寄せられました。

投稿したのは、和歌山県橋本市にある洋菓子店「プティ・アシェット」さん(@petit_assiette)。通常のケーキをはじめ、オーダーケーキや、スイーツのブーケなども、手掛けています。

店の開店から25年、周辺の手入れを引き受ける父

お父さんは、プティ・アシェットがオープンした25年前から、店の周りの清掃や花壇の植え替えなどを率先して行ってきました。現在、投稿に写っている道路を本格的に掃除するようになったのは、80歳を迎えた頃。それまでは保険関係の仕事を続けていたそうです。

ただし、地域のために体を動かすのは、今に始まったことではありません。以前から地域の溝掃除や草刈りに参加し、自分の土地ではない場所も進んで手入れしてきました。

店は、お父さんが所有する土地に建てられています。娘さんたちが店の仕事に追われ、周囲の手入れまで手が回らないだろうと、お父さんが引き受けてくれたのだといいます。

清掃は週に1、2回ほど。予定を立てて出かけるだけでなく、車で通りかかった際にごみを見つけると、その場で車を止めて拾い始めることもあります。

「日常の中でやるので、あのようないつものワイシャツにスラックスなんです」

投稿を見た人からも「しかも、きちんとした服装で!かっこいい」と、その装いに注目する声が上がりました。

「困っている人を見て見ぬふりができない」

娘さんによると、お父さんは思いついたらすぐに行動する人。困っている人を見かけても、決して見て見ぬふりができない性格です。

道路や樹木が通行人にとって危険だと感じれば、行政へ改善を働きかけることも。一度決めたら譲らない頑固な一面がある一方、普段はにこやかで、誰とでも気さくに話すといいます。

そんなお父さんの口癖が、次の言葉でした。

「プティ・アシェットにくるお客さんが汚い道を通ってこなあかんのは嫌や」

辺ぴな場所にある店まで、わざわざ足を運んでくれるお客さんを大切にしたい。その思いが、長年にわたる清掃を支えています。

父にはもちろん、来店するお客さんへの感謝を、いっそう強く感じるようになったそうです。

清掃中には、トラックの運転手や通行人から、会釈をされたり「ありがとう」と声をかけられたりすることもあります。お父さんは「自分が好きでやっているから」と話しながらも、感謝された日はうれしそうに家族へ報告していました。

引退後、「自分の存在価値」を探していた父

保険の仕事を引退した後、お父さんには、自分の存在価値を探しているように見える時期があったといいます。

今回、娘さんは清掃する父のそばを仕事中に、車で通りかかりました。一度は「気をつけてな」と声をかけて通り過ぎましたが、「この姿を残しておきたい」という思いが込み上げ、投稿を決めました。

父が続けてきた活動を少しでも多くの人に知ってほしい。同時に、道路にこれほど多くのごみが捨てられている現実にも目を向けてほしい。投稿には、父への感謝と尊敬、そしてポイ捨てを減らしたいという願いが込められています。

予想を超える反響に、家族も驚きました。お父さんへコメントを見せると、「へえー!?」と驚きながら、一つひとつ一生懸命に読んでいたそうです。

投稿には「本当に頭が下がります」「先週、掃除してくださっているところをお見かけしました」「道をきれいにしてくださり感謝申し上げます」といった声が寄せられました。一方、「熱中症と車には気をつけて」「無理はなさらないように」と、体調や安全を案じる声も少なくありません。

反射タスキを着け、安全にも配慮

お父さんは保険の仕事で何度も事故現場を見てきた経験から、「事故に遭わないよう気をつけている」と自信をのぞかせます。しかし、道路沿いでの作業だけに、家族の心配は尽きません。

暑い日は午前中だけにすること、車のハザードランプをきちんと点灯させること、見通しのよい場所に駐車することなどを繰り返し伝えています。さらに、投稿を目にした人からプレゼントされた反射タスキも身につけるようになりました。今後は、これまで以上に安全を考えながら活動してもらう方針です。

娘さんは、今回の投稿を通じて、父を心配し、見守ってくれる人が大勢いることを知りました。

「この投稿で、少しでもポイ捨てをする人が減ればいいなと思います。父のように活動している方を見かけたら、ゆっくり走って、ありがとうの笑顔を返すだけでも、感謝は十分に伝わると思います」

何げなく捨てられた一つのごみを、誰かが拾っています。87歳のお父さんが大切にしている道は、店を訪れるお客さんへの思いやりと、地域への静かな愛情によって、今日もきれいに保たれています。

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