あえて籍を入れない「事実婚(内縁関係)」を選ぶカップルが増える一方、その関係を解消する際の法律上のルールについては意外と知られていません。「戸籍上の夫婦じゃないから離婚手続きも不要だし、浮気で慰謝料も出ないでしょ」「ただの同居解消と同じでしょ」という素朴な思い込みや勘違いが、泥沼の裁判沙汰に発展することもあるようです。
事実婚の関係を解消する際、法的権利や対処法はどうなっているのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。
浮気や不当破棄なら請求可能
ー内縁関係の解消でも財産分与や慰謝料は請求できますか?
内縁(事実婚)であっても法律上の婚姻関係に準じた法的保護を受けるため、財産分与や慰謝料の請求が可能です。相手の浮気や一方的な関係破棄があれば、不貞行為や不当破棄として慰謝料を請求できます。
また、同居期間中に夫婦で協力して築いた共有財産についても、戸籍上の夫婦と同様に原則として折半するなどの財産分与を求める権利が認められています。
ー事実婚の相手から一方的に家を追い出されたらどんな問題がありますか?
内縁関係にあるパートナーを一方的に追い出したり、鍵を勝手に変えて締め出したりする行為は「内縁の不当破棄」にあたります。
法律上の配偶者と同様に内縁の配偶者にも保護が与えられるため、このような身勝手な追い出しを受けた場合は、不当破棄に対する慰謝料や当面の生活費、引っ越し費用などの損害賠償を請求することが可能です。
ー「ただの同棲」ではなく「内縁」と認められる基準は何ですか?
単なる同棲か内縁(事実婚)かの違いは、「夫婦になろうとする意思」と「夫婦としての生活実態」の有無で判断されます。
具体的には、数年以上の同居期間、家計の共有、お互いの親族や周囲へ夫婦として周知しているか、住民票における「未届の妻(夫)」の記載などが総合的に考慮されます。これらが証明できれば、法的保護を受ける内縁と認められます。
ー事実婚を解消する時に交わしておくべき取り決めとは何ですか?
解消時のトラブルを防ぐため、財産分与の額や支払い方法、不貞行為などの慰謝料、住居の退去時期などを明記した「内縁解消協議書」を文書で作成することが重要です。
当事者間で取り決めた内容を「公正証書」にしておくことで、将来的に金の支払いが滞った場合にも裁判を経ずに強制執行を行えます。後日の紛争を防ぐためにも書面化は不可欠です。
◆北村真一(きたむら・しんいち) 弁護士
「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないという声もあがる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。