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口にできなかった「ごめんね」 今も消えない遠い日の後悔 がんで弱った父と過ごした3カ月は最後の贈り物かもしれない【漫画】

海川 まこと 海川 まこと

父の日や母の日を迎えるたび、家族との思い出を振り返る人は多いでしょう。「ありがとう」や「ごめんなさい」は、伝えようと思っていても意外と言えないものです。そんな父への後悔を描いた、森ぽこさんの作品『父に、言えなかった言葉。』が注目を集めています。

今年の父の日、息子たちから特別なお祝いは何もありませんでした。しかし作者は、「その方が気持ちは楽だった」と振り返ります。それは、自身が父に対して今も消えない後悔を抱えているからです。

それは作者が28歳くらいのときのことです。父親が作者の仕事に関する話を、作者に相談もなく勝手に進めてしまったことがありました。そのことに強い怒りを覚えた作者は、大勢の人がいる前で父を大声で怒鳴ってしまいます。殴られることも覚悟しましたが、父は何も言わずその場を静かに立ち去りました。

後日、母から「みんなの前で怒るなんて、お父さんの気持ちを考えていない」と叱られます。それでも森さんは気持ちの整理がつかず、父とは1カ月以上も口をききませんでした。やがて再び話をするようになってからは、何度も「ごめんなさい」と伝えようとしましたが、その一言だけはどうしても口にできなかったのです。

そんなある日、母から父にがんが見つかったと連絡が入ります。まだその事実を受け止めきれずにいたころ、今度は長年勤めていた会社が倒産してしまいました。その後、作者は仕事を失ったことは病気の父に伝えず、一緒に過ごす時間を大切にしました。子どものころによく連れて行ってもらったレストランで食事をしたり、公園でゆっくり話をしたり、父の体が弱ってからは車いすを押して散歩をしたり、父との時間を少しずつ積み重ねていきました。

しかし、その時間は長くは続かず、わずか3カ月後に父は亡くなります。作者は最後まで「ごめんなさい」の一言を伝えることはできませんでした。父を見送ってしばらく経ったころ、不思議なことに仕事の依頼が舞い込むようになります。その出来事から作者は、「仕事を失ったのは罰ではなく、父と最後の時間を過ごすために与えられた時間だったのかもしれない」と思うようになりました。それでも、父に謝れなかったことだけは今も心に残り続けています。

同作について、作者の森ぽこさんに詳しく話を聞きました。

謝れなかった「ごめん」が今も心に残る

ーお父様に怒鳴ってしまった出来事は、その後もずっと心に引っかかっていたのでしょうか?

父に怒鳴ってしまったことは、その日の夜にはもう後悔していました。その後、母から 「みんなの前で、お父さんの立場や気持ちを考えてあげられなかったね」 と言われ、その言葉がとても胸に刺さりました。自分は父の気持ちを傷つけてしまったのだと強く感じ、とても申し訳ない気持ちになりました。なので、この後悔は父の病気とは関係なく、その時からずっと心に残っていたものです。

ー何度も謝ろうと思いながら言葉にできなかったとありましたが、伝えられなかった理由は何だったのでしょうか?

本当に不思議ですよね。 たった一言の「ごめんね」が、どうしてあんなに言えなかったのだろうと思います。きっと私は「言葉にしなくても、普段の行動で父への気持ちは伝わっている」と、どこかで思っていたのだと思います。でも父がいなくなって初めて、気持ちは伝わっているかもしれないけれど、「ごめんね」や「ありがとう」のような言葉は、やはり口にして伝えることが大切なのだと気づきました。そうすることで、自分自身の心も少し救われるのだと思います。

ーお父様と過ごす時間をくれたのかもしれないと思えるようになったのはいつごろだったのでしょうか?

父が亡くなり、すべての手続きを終えたあと、1週間も経たないうちに新しい仕事のお話をいただきました。そのタイミングがあまりにも重なっていたので、私は「この仕事がなくなった時間は、父と最後に一緒に過ごすために神様が与えてくれた時間だったのかもしれない」と思うようになりました。もしあの時、以前と同じように忙しく仕事をしていたら、父と過ごせた時間はもっと少なかったかもしれません。今では、その時間が父からの最後の贈り物だったのではないかと思っています。

<森ぽこさん関連情報>
▽Instagram
https://www.instagram.com/moripoko_101

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