愛知県内で暮らす38歳の会社員・佐藤さん(仮名)。夫と、小学1年生の長男、保育園年長の長女との4人家族です。長男は自閉スペクトラム症(ASD)の診断を受けており、地域の小学校の普通学級に通っています。週に1回は通級指導教室を利用していますが、学校生活の大半は通常学級で過ごしています。
夫婦は共働きで、どちらも平日はフルタイム勤務です。学校がある間は何とか仕事と子育てを両立できていますが、夏休みが近づくにつれ、子どもの預け先の心配が大きくなっていました。
長男は環境の変化に不安を感じやすく、友達とのコミュニケーションに困難さを感じています。現在は放課後に学童保育を利用していますが、大人数での活動や集団遊びに負担を感じているようで、学童保育から帰宅すると疲れ切っている日も多くあります。
夏休みが近づくにつれて、朝から夕方まで長時間学童保育で子どもを過ごさせることに不安を感じた佐藤さんは、これを機にもっと我が子に合った居場所がないかと考えるようになりました。
障害のある子どもを育てる家庭では、長期休暇中の居場所や見守りに悩むケースが少なくありません。そこで、夏休みの前に知っておきたい、特性のある子の日中の居場所や支援制度について見ていきましょう。
夏休みに障害がある子の居場所探しで悩む家庭が多い
夏休みになると、子どもの居場所に悩む家庭は少なくありません。共働きの家庭では、保護者が日中仕事で不在になるため、子どもの見守りが大きな課題になります。
さらに、発達障害のある子どもは、特性ゆえに学童保育の集団生活になじめない場合があります。一方で、地域の小学校に通う子どもの親は福祉サービスの情報が届きにくく、「利用できる支援があること自体を知らなかった」という人も珍しくありません。夏休みに入る前に、特性のある子どもの日中の居場所や利用できる支援を確かめておくことが大切です。
障害のある子が利用できる「放課後等デイサービス」
佐藤さんは、子どもの夏休みの生活について担任の先生に相談したところ、市区町村の障害福祉窓口を紹介されました。そこで知ったのが「放課後等デイサービス」でした。
放課後等デイサービスとは、発達障害や知的障害、身体障害などがあり、日常生活の自立支援や機能訓練、集団生活への適応が必要とされる子どもを対象とした福祉サービスです。医師の診断の有無にかかわらず、自治体で「支援が必要」と認められれば利用が可能です。放課後だけでなく、夏休みなどの長期休暇には午前中からの利用が可能な事業所もあります。
一般的な学童保育が、日中に保護者が不在となる子どもに生活や遊びの場を提供するのに対し、放課後等デイサービスでは、個別支援計画に基づき、一人ひとりの特性や発達上のニーズに合わせた支援や訓練などを受けることができます。事業所ごとにさまざまなプログラムが用意されており、特性のある子どもが安心して過ごせる居場所として機能しています。
「放課後等デイサービス」利用の流れと料金
発達障害などのある子どもが放課後等デイサービスを利用するには、まずお住まいの市区町村の障害福祉窓口に相談しましょう。自治体によって「障害福祉課」「福祉課」「子ども家庭課」など、名称が異なる場合があります。
利用申請に際しては、自治体やお子さんの状況によって申請先窓口や必要書類が異なる場合がありますので、事前に確認しておくとよいでしょう。また、放課後等デイサービスの利用には、受給者証が必要です。自治体の障害福祉窓口で、申請手続きを行ってください。
▽まずは事業所を見学してみよう
自治体によって異なりますが、受給者証の発行には2週間~1カ月半程度かかります。その間に、気になる放課後等デイサービスを見学してみるとよいでしょう。
事業所ごとに活動内容や利用時間、送迎の有無などが異なります。雰囲気にも違いがあるため、見学や一日体験を通じて、お子さんに合う事業所を探してください。
▽放課後等デイサービスの利用料は?
放課後等デイサービスの利用料は、国が定めたサービス料金の1割が原則ですが、世帯の課税状況に応じて、1カ月あたりの負担上限額が設定されています。負担上限額は、世帯の「市町村民税所得割額」によって、以下の4つの区分に分けられます。
・生活保護受給世帯:0円
・市町村民税非課税世帯:0円
・市町村民税所得割額28万円未満:月額4600円(世帯年収がおおむね890万円未満の場合が目安)
・市町村民税所得割額28万円以上:月額3万7200円(世帯年収がおおむね890万円以上の場合が目安)
※「年収890万円」は、あくまで目安です。実際の区分は、世帯構成や各種控除(配偶者控除、扶養控除、医療費控除など)によって変わるため、同じ年収でも区分が異なる場合があります。
利用回数が増えても、1カ月の利用料が上限額を超えることはありません。また、自治体によっては独自の軽減制度を設けている場合があります。たとえば名古屋市では、所得割額28万円以上46万円未満の障害児世帯について、上限額を月額1万8600円としています。
さらに、利用料とは別に昼食代やおやつ代が必要になる場合があります。レクリエーション費などの実費がかかる事業所もあるため、事前に確認しておくと安心です。
佐藤さんの場合、市区町村の窓口で確認したところ、世帯の所得割額に基づいて月額4600円の区分に該当することが分かりました。
「うちの子に合うかも」佐藤さんが見つけた夏休みの居場所
佐藤さんは市区町村の障害福祉窓口で、受給者証の申請を勧められました。さらに、最寄りの放課後等デイサービスをいくつか紹介してもらい、気になる事業所をいくつか見学。その結果、夏休み前に長男に合う放課後等デイサービスが見つかりました。
事業所見学で工作や運動などの活動を楽しんだ長男は、夏休みを心待ちにしています。佐藤さんは「もっと早く相談すればよかった」と話していました。
◇ ◇
放課後等デイサービスは、障害や発達上の特性があり、支援を必要とする子どもが安心して過ごせて、保護者の負担を軽減できる心強い支援サービスです。利用について考え始めた段階で、早めに自治体に相談するのがおすすめです。
利用には受給者証の取得が必要ですが、費用を抑えながら利用できる仕組みが整っています。まずは自治体の障害福祉窓口や相談支援機関に相談し、子どもの特性や家庭の状況に合った事業所を探してみましょう。
【出典】
こども家庭庁「放課後等デイサービスガイドライン」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/7692b729-5944-45ee-bbd8-f0283126b7db/def1acaf/20241101_policies_shougaijishien_shisaku_guideline_tebiki_06.pdf
京都市「児童発達支援、放課後等デイサービスを利用するまでの流れについて」
https://www.city.kyoto.lg.jp/hagukumi/page/0000273381.html
名古屋子ども発達支援サイト「児童発達支援給付・放課後等デイサービス給付」
https://stepsupport.city.nagoya.jp/kyufu/
LITALICOジュニア「放課後等デイサービスとは?対象者や料金・利用の流れをわかりやすく解説」
https://junior.litalico.jp/column/article/002/
障害福祉専門の税理士事務所アンテリジャンス・グループ「放課後等デイサービス(放デイ)は夏休みなどの長期休暇中も利用できる?」
https://syogai-zeirishi.com/1511/
夢門塾「放課後デイっていくらかかるの?~利用料金のしくみ」
https://www.careoth-junior.com/mumonjuku/dd/houkago-day/732/
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。