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うまくいかない 小説も仕事も人間関係も 10年前に1冊出したきりの作家 新しい担当から「芥川賞」を厳命された【漫画】

海川 まこと 海川 まこと

人は1回できた成功体験を再現しようとしてしまうものです。それを一蹴できるのは、一途に進みたい道を進み続けることだけかもしれません。漫画家・鈴木二三江さんの作品『妄執女(ファムファタール)と芥川』の第1話では、本を出さない作家と編集者の邂逅が描かれています。同作はX(旧Twitter)に投稿されると、約5200のいいねが寄せられました。

作家の不破メイコは、10年前に唯一出した単行本『ベラドンナ』以降、企画が不採用されてばかりで1冊も本を出せていません。新しく作った企画も、担当に「読んでてイラつく」と一蹴されます。担当からは「ベラドンナみたいなの書けません?」と言われますが、不破はベラドンナを書いて以降、自身の作品に感想を送ってくれていた『ユウちゃん』から感想が来なくなったため、同様の作品を書きたくありませんでした。

また、不破は作家と兼業で会社員として働いていますが、こちらもミスばかりでうまくいきません。上司からは「やめろ!退職しろ!」と、同僚からは「不破さんがいなかったら平和なのに」と言われてしまいました。

不破は自分のことを「存在している価値のない人間」だと考えます。そんな不破が、唯一の心のよりどころとしていたものが、ユウちゃんからの作品の感想文でした。不破の自宅には、廊下一面にユウの感想が貼り付けられ、それを見ながら「いつもありがとう大好き」と頬を擦り寄せます。

不破とユウの出会いは図書館でした。不破は時間つぶしのため、ひたすら小説を書いては捨てていましたが、ある日見知らぬ女性が勝手に読んでいました。そして後日、その女性は「ユウより」と書いた小説の感想文を置いていきます。

その感想文を読んだ不破は、味わったことのない多幸感におそわれ「私はユウちゃんから感想をもらうために小説を書いてたんだ」と世界が色づきはじめます。それからも幾度となくユウから感想文をもらいましたが、ユウの顔や声自体はまったく知りませんでした。

ところがある日、ユウは図書館に現れなくなります。それをきっかけに不破は「ユウちゃんが読んでくれるかもしれない」と思い、小説を雑誌に投稿しはじめます。これに対して、1度だけユウがファンレターを送ってくれたことがありました。しかし、ベラドンナが単行本化され文学賞を受賞して以降、ユウは感想文を送ってこなくなります。

それからも不破は、ユウが昔くれた幸せを求め続けて小説を書き続けますが、ある日自宅が火事で全焼してしまい、大切な感想文がなくなってしまうのでした。自分を唯一支えたくれた感想文がなくなった不破は、死ぬことしか考えられなくなりますが、そこに突如「やっぱりメイちゃん(不破)は天才だね」とベラドンナの感想文をしゃべりだす女性が現れました。

思わず不破は「ユウちゃん?」と尋ねると、謎の女性は「さすがです。これがユウちゃんの感想って分かるんですね!」とユウのことを知っている様子で話し始めました。彼女の名前は薬師丸萌子、不破の作品を1番理解している新たな編集者と自称します。

妖しくも不気味な雰囲気を醸し出す薬師丸は、ユウになんで会いたいのか、作家のくせに自分の気持ちを言語化できないのかと不破に詰め寄ります。そして薬師丸は、先生の考えをまとめるお手伝いと称して、不破に深く口づけしてきたのです。

しゃべれず動けない状況となった不破は、なぜユウに会いたいと思ったのかと考えます。そして、ユウの声が聞いてみたいからだと気付いたのでした。これに対して薬師丸は「聞いたことなかったでしたっけ?」と言ったあとに「芥川賞取ったらユウちゃんと会わせてあげます!」と不破と約束するのでした。

読者からは「人の情念がめちゃくちゃ刺さった」「久々に心が動く作品だった…」などの声が寄せられています。そこで、作者の鈴木二三江さんに話を聞きました。

今後変わるものと変わらないものはなにか

――同作を描いたきっかけについて教えてください

バディ物を描きたかったのと、漫画映画小説と創作物がとにかく好きなのでそこから編集者と小説家の話を描こうと思ったのがきっかけです。

――作品表現において、とくに意識していることはありますか?

作中で出てくる不破が書いた小説と、不破の感情変化をシンクロさせるようにしています。不破の感情や思考を小説であらわす際、不破メイコの名前を利用しています。

現在をメイ(皐月)過去をエイプリル(卯月)未来をジューン(水無月)を作中作の主人公の名前に利用しています。

過去未来現在の不破の感情や思考の存在は、今後登場する登場人物を含めた3人(薬師丸、窪塚、日下部)によって許容されて小説に昇華され、不破の成長につながります。

小説家の漫画なので、そこは関連性があるように意識してます。

――ユウちゃんの正体や妖しい編集者など今後が気になる展開でしたが、どういった点に注目してほしいですか

1話では薬師丸と不破の関係性はお互いに依存先が1つしかなく、実際現実に2人がいたら異常な精神状態です。2人とも初期は盲目的な精神状態で行動を選択しています。

話が進むにつれて、2人の依存関係性がほかの登場人物や小説執筆によって変化したとき、どういった選択をしていくのか。関係性を進めるためにどういった覚悟をするのか。変わるものと変わらないものはなにか…に注目していただけると幸いです!

<鈴木二三江さん関連情報>
▽X(旧Twitter)
https://x.com/fuming_e
『妄執女と芥川』
▽カドコミ
https://comic-walker.com/detail/KC_007176_S?episodeType=first
▽KADOKAWA
https://www.kadokawa.co.jp/product/322512000052/

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