tl_bnr_land

迷って山で遭難、つい取ってしまう行動が逆効果!? 山岳遭難救助隊の注意喚起に「助かるというのは迷信だったのか」「心理的に行けそうと感じてしまうかも」

谷町 邦子 谷町 邦子

「人は迷うと沢を下る…」

山で起こりがちな判断ミスへの注意喚起と、実際の救助の様子を記録した動画がXに投稿され大きな反響に。沢を下ることと「遭難」の関係などを、山岳遭難救助の立場から詳しく話してもらいました。

山登りをする人が増えたシーズンに、長野県警察山岳遭難救助隊(@NAGANO_P_M_R)は、山で迷った時には「『登り返す』ことが重要」とXに投稿しました。山を下るのではなく、来た道をひき返す、上に向けて登ることが大事となってきます。

遭難とは、迷ったり、ケガや衰弱で動けなくなったりして、自力で安全に山を下りられなくなることを指します。迷った時に沢を下る人は多いのですが、向かった先には「急峻な斜面、地図にない崖や滝」があり、そこでは不安定な斜面で滑落しケガ、沢筋で通信が途切れる、服が濡れて低体温症のリスクが高まるなどで、生命の危機に陥ってしまいます。

ともに投稿した動画「笠ヶ岳における遭難救助」では、沢の横で座り込む女性を救助する様子を公開。女性は一緒に山菜採りに来ていた息子とはぐれ、山頂を目指していたつもりが、いつの間にか沢を下っていたそう。転倒し水で濡れ「寒い」と言っていた状況のなか、無事に救助されました。

投稿には、

・大学の登山部で活動してた先輩から、口酸っぱくして言われた
・山で迷ったら上に登れ!と漫画で読みました。必ずそうします
・え そうなんだ 小学生のとき「山で迷ったら川を見つけ、下りなさい。必ず人がいる所に辿り着くから」って習ってた
・沢を下ると町に出る=助かるというのは迷信だったのか
・心理的には、下ると街というか人がいる所へ行けそう、と感じてしまうかな

など、知っていたという声も多かった一方で、今まで知らなかった人や、下るのが正しいと思っていた人、迷ったら沢を下りたくなってしまいそうと言う人も少なくありませんでした。沢を下ってしまい遭難したり、下山に時間がかかったりした経験を語る人も。

沢を下ることが遭難の原因となったケースは多いのか。沢を下ろうと考えた人が陥る心理とは…長野県警察本部山岳安全対策課の山岳遭難救助隊長、岸本俊朗さんにたずねました。

「行方不明者のご遺体は沢で発見されることが多い」

県内で発生した遭難の様態(状態)についての統計の結果が今回の注意喚起につながったそうです。

「本年5月末までに発生した山岳遭難84件中、滑落は23件(約27%)、道迷いが15件(約18%)で遭難態様の1位と2位を占めています。

年間の統計では平均して、滑落約25%、転倒約25%、疲労約15%、道迷い約10%でこの4態様が遭難の7~8割程度に」

今年5月末の時点で、「道迷い」「滑落」は統計の平均よりも多い状況です。そんななかで、「沢を下る」という行為が、実際に遭難の原因となった事例は多いのでしょうか。

「直接的な原因ではないですが、行方不明者のご遺体は沢で発見されることが多いです。生存救助された事例でも山中で現在地を見失った後、下山を続けた結果、沢や谷を下り続け、滝や崖に出くわし行動不能になったり、滑落して負傷するケースがあります」

捜索しているなかで、沢の近くで動けなくなったり、亡くなってしまっているという状況に救助隊員が立ち会うことが多いようです。

「心理的に楽な選択」と「安易な判断」

では、山で道に迷うと、なぜ沢を下ってしまうのか。救助された人の証言などから推測できる理由は?

「理由はそれぞれであるが、1つは登り返すのは体力的に負担があるため、心理的に楽な選択をしてしまうことが考えられます。また、遭難者が自身の位置関係を誤信し、『このまま下れば〇〇にたどり着く』など、安易に判断しているケースがあるのではないかと」

しかし、下った先には、さらに下山や発見を困難にする状況が待っているようです。

「山中の沢は地図には記載されていないような崖や滝があり、滑りやすく非常に危険です。迷い込んでから通報をしようとしても電話が通じない場合が多いことも。位置情報などの情報がなければ発見も非常に困難になります」

注意喚起をした投稿に、「下るのが正しいと思っていた」などのコメントがあったことについては、「コメントの当事者が登山を趣味としている人かどうかわからないので一概には言えない」と前置きをしつつ、次のように語ってくれました。

「道に迷ったら登り返すという基本的な登山の行動原理が現在は忘れられている可能性を感じます。今回の我々の投稿をきっかけにこのような安全に関係する行動原理が広まれば幸いです」

「迷ったら登り返す」。今年初めて登山に挑戦する人や登山に不慣れな人は、特に知っておかなければいけない情報だと言えそうです。

「遭難をしないため、そして遭難を想定した準備も」

8月下旬までは、夏山登山のシーズン。特に夏に注意するべきことを聞いてみました。

「登山をする方には遭難を他人事と考えずに、入山前は遭難をしないための準備を万全に。特に体力的に余裕のない登山はそれだけで遭難のリスクが高くなるため、普段からトレーニングをするとともに自分の経験や体力に見合った山を選んでいただければ。

遭難を想定した準備も大事です。計画書の提出や家族との共有、最近は登山中の現在地を家族などと共有できるアプリもあるため活用をしていただきたいです。スマートフォン、予備バッテリーの携行、動けなくなった時の簡易シェルターや非常食の用意なども検討を」

そのほかにも準備として「複数人での入山、声や目の届く範囲での行動」「携帯電話やヘッドライトなど最低限の装備の携行」「目立つ色の服やリュック」「存在を知らせるホイッスル・ライト」などが必要だとXで記されています。

◇ ◇

長野県警察では令和6年(2024年)から、個別の山岳遭難ごとに救助された人からの聞き取りをもとに、写真や地図、グラフなどを添えて詳細なレポート「山岳遭難の現場から ~Mountain Rescue File~」を作成し、公式ホームページで公開しています。

「なぜ遭難したのか、どうやって救助されたのかといった遭難にいたる背景や経過を伝えることで、遭難の実態と登山のリスクを広く知ってもらうことを目的に作成した。『マウンテン レスキューファイル』と検索すると表示されるので、ぜひ一読をいただきたい」

■長野県警察山岳遭難救助隊(@NAGANO_P_M_R)公式Xアカウント https://x.com/NAGANO_P_M_R
■長野県警察公式ホームページ「山岳遭難の現場から ~Mountain Rescue File~」https://www.pref.nagano.lg.jp/police/sangaku/mountain_rescuefile.html
■長野県警察公式ホームページ 「山岳情報」https://www.pref.nagano.lg.jp/police/sangaku/index.html

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース