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置き忘れが頻繁になった70代の母 受診をすすめたら…「大げさよ。私が病人だって言うの?」と逆ギレ【医師が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

会社員のAさんは、実家に住む70代の母親の物忘れが気になっています。同じことを何度も尋ねてきたり、物の置き場所を頻繁に忘れたりする様子が目立つようになりました。

しかし当人である母親は年齢のせいだと気にとめておらず、Aさんも母親と同じく加齢によるものかもと思っています。

このことをAさんは会社の同僚に話すと、同僚は真剣な顔をして「それって認知症じゃないのか?」と言いました。この言葉にAさんも危機感を抱き、帰宅すると母親に病院へ行こうと勧めます。しかし母親は「ちょっと物忘れをしただけで大げさよ。それとも私が病人だって言うの?」と少し怒ったように反論するのでした。

では母親の物忘れは、加齢によるものなのか認知症のサインなのか、どのように見分けたらよいのでしょうか。また、本人を傷つけずに受診へ促すにはどう対応すればよいのでしょうか。医療法人社団筑三会理事長で、医師の鈴木隆二さんに話を聞きました。

認知症では、食事したこと自体を忘れる

―加齢による物忘れと、認知症の初期症状にはどんな違いがありますか

大きな違いは、「忘れ方」と「自覚の有無」です。加齢による物忘れでは、例えば夕食の内容を忘れたとしても、思い出そうとすれば思い出せる、また忘れている自覚があることが多いです。

一方認知症では、食事したこと自体を忘れる、ヒントがあっても思い出せない、忘れている自覚が乏しいなどの症状が見られます。また、同じ質問を何度も繰り返す場合は、認知症の可能性を考える必要があります。

―なぜ「物忘れかな?」と思うぐらいの早い段階で受診することが大切なのでしょうか。

早期発見・早期対応が非常に重要な理由としては、認知症の進行を遅らせる治療があるためです。完全に治すことは難しくても、進行をゆるやかにすることが可能です。また早期に対応すれば、本人の自立した生活を長く保てるため、結果として家族の負担軽減にもつながります。

家族の準備ができていない状態で認知症が進行すると、介護負担が急激に増えることになります。そのため、「まだ大丈夫」と様子を見るよりも、「少し気になる段階」で相談することが理想です。

―日常生活のなかで気づきやすい、認知症の初期サインや行動の変化について教えてください。

先ほどご紹介した認知症の初期症状も含めて、「同じ話や質問を繰り返す」「物の置き場所を忘れ、探し回る」「約束や予定を忘れる」「料理や家事の手順が分からなくなる」「以前好きだったことに興味がなくなる」「怒りっぽくなる、性格が変わる」「お金の管理ができなくなる」などの症状が確認できる場合は注意が必要です。特に、以前できていたことができなくなる点が重要なポイントとなります。

―本人を傷つけず医療機関へとつなげるには、どのように声掛けをすればよいでしょうか。

最も大切なのは、「否定しない・責めない」ことです。「なんで忘れるの?」「何回言えば分かるの?」といった言葉がけは、本人を傷つけるだけでなく、感情を逆撫でしてかえって受診を遠ざける結果を招きかねません。

おすすめの伝え方は、「最近ちょっと疲れてない?一度一緒に診てもらおうか」「健康チェックのつもりで行ってみよう」「私も一緒に行くから安心して」など、健康相談の延長として提案することです。かかりつけの医療機関があるなら、そこに相談してみることからはじめるのがいいでしょう。

本人を説得しようとするのではなく、まずは不安に寄り添い安心してもらうことを意識してみてください。あなたが味方であると伝わることが、受診への第一歩となります。

◆鈴木隆二(すずき・りゅうじ) 医療法人社団筑三会理事長 消化器外科専門医(筑波胃腸病院/千葉柏駅前胃と大腸肛門の内視鏡日帰り手術クリニック・健診プラザ)
医療法人大壮会久喜すずのき病院CIO、医療法人社団ユーアイエメリー会(すずのきメンタルケアクリニック、浦和/大宮/草加/新座すずのきクリニック)CIO。聖マリアンナ医科大学卒業。東京女子医科大学消化器病センター助教を経て、現理事長に就任。消化器専門病院で「胃腸の人生を、診る」をモットーに、患者中心の医療を健康診断、内視鏡、手術、緩和とを軸として展開する。

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