「お父さん、エアコンつけなくていいの?」と電話したとき、「電気代がもったいない」という答えが返ってくることはありませんか。東京都在住の田中さん(仮名・45歳)は昨夏、要介護の父親が自宅の和室で倒れているのを週1回の訪問時に発見しました。そのときの室温は33度を超えていたにもかかわらず、エアコンのスイッチは入っていなかったといいます。高齢者は暑さを感じにくく、また節電への遠慮から冷房を使わない傾向があります。そのため、本人が「大丈夫」と言っていても、周囲が気づかないうちに命の危険にさらされているケースが後を絶ちません。このような事故の背景には、「気づきにくさ」と「経済的な遠慮」があります。
本格的な暑さが続く夏は、高齢者や要介護者にとって特に危険な時期です。本記事では、自治体が提供するエアコン補助制度や訪問支援サービスの活用方法、そして費用の目安を分かりやすく解説します。行政の制度をうまく活用すれば、金銭的な負担を大きく減らすことができます。ぜひ一度、確認してみてください。
なぜ高齢者・要介護者は危ないのか
2025年5月から9月の熱中症による救急搬送者数は全国で10万510人となり、調査開始以降で初めて10万人を超え、過去最多を更新しました。
続いて、深刻なのは発生場所です。熱中症の発生場所を見ると、住居が38.1%と最も多く、約4割のケースが自宅の中で起きています。また、年代別では65歳以上の高齢者が最多の5万7433人で、全体の57.1%を占めています。
加齢によって体温調節機能が低下している高齢者は、体内に熱がこもりやすくなっています。また体内の水分量が減少して脱水状態に陥りやすく、のどの渇きや暑さも感じにくいため、気づかないうちに熱中症になっていることがあります。また、身体状況や服薬の影響から、体温調節が難しいケースが多くあります。
まず確認したい「エアコン補助制度」
東京都では、猛暑対策の一環として、高齢者や障害のある人を対象にエアコン購入費を補助する制度が実施されています。購入日の時点で満65歳以上の人、または身体障害者手帳・愛の手帳・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの人が対象となっています。
条件や対象者は異なりますが、東京都以外でもエアコンの購入に関する支援をしている自治体があります。エアコンの購入を検討する際は、まず、お住まいの自治体の公式ホームページや福祉担当窓口、またはケアマネジャーに「最新の補助制度があるか」を確認することが重要です。タイミングによっては、同様の支援が再度実施される場合や、別の形で助成を受けられるケースもあります。
「訪問支援」で命を守る
エアコンを設置するだけでは、不十分な場合もあります。認知症や身体に障害のある人は、エアコンを自分でつけられないこともあるからです。そこで重要になるのが、訪問系の介護・支援サービスです。
訪問介護(ホームヘルプ)では、ケアマネジャーと相談の上で、必要に応じてヘルパーが自宅を訪問し、室温の確認や水分補給の声かけを行います。要介護認定を受けていれば介護保険が使え、自己負担は1〜3割です。居宅介護は障害者総合支援法に基づくサービスで、市町村による支給決定(障害支援区分の認定など)を受けた方が対象となり、同様に自己負担は原則1割です。
また、民生委員・児童委員、ケアマネジャー、ホームヘルパー、配食サービス事業者などが連携し、訪問時に熱中症予防のリーフレット配付や見守り活動を行う取り組みも、各自治体で進められています。
利用者本人への直接給付ではありませんが、東京都では、訪問介護や訪問看護などの事業所に対し、熱中症対策にかかる費用を補助する事業がこれまで実施されてきました。こうした支援は年度ごとに実施の有無や内容が見直されるため、現在利用できる制度については最新情報の確認が必要です。
「うちの親、今年の夏は大丈夫?」と思ったら
夏の暑さに備えて、今すぐできるチェックポイントをご紹介します。
・自宅の室温が28℃を超えていないか
→温度計を置いて28℃に目印を付け、超えるようであればエアコンを利用するように伝えましょう
※日本生気象学会では、真夏の室温が28℃を超えないよう推奨しています。
・エアコンが正常に動作するか
→異常があれば、すぐに修理依頼を。業者によるエアコン清掃も、おすすめです。
・水分が1日1.2リットル以上摂れているか
→飲料のストックも定期的にチェックして、足りなければ買い足しましょう。
※持病がある人は、適切な水分摂取量について主治医に相談してください。
・かかりつけ医から「熱中症に注意を要する薬」を処方されていないか(利尿剤・一部の降圧剤など)
→処方されている場合の水分摂取量については、かかりつけ医と相談しましょう。
これらのポイントについて、一度ご確認ください。
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エアコンが故障している場合や、10年以上使用している古い機種を使っている場合は、補助制度の活用も含めて早めの買い替えを検討することが重要です。梅雨明け後の繁忙期は工事が混み合う傾向があるため、できるだけ梅雨入り前に準備を進めることが望ましいでしょう。行政の窓口やケアマネジャーへの相談は、無料で行えます。まずは自治体窓口や、ケアマネジャーに相談してみましょう。
【出典】
総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況」
東京都「東京ゼロエミポイント(高齢者・障害者向けエアコン購入支援)拡充のお知らせ」(令和7年8月22日発表)
厚生労働省「地域の高齢者等に対する熱中症対策の事例について」
厚生労働省「熱中症を防ぎましょう―障害のある方へ」
日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針」Ver.4(2022年5月23日)
【監修】勝水健吾(かつみず・けんご)社会福祉士、産業カウンセラー、理学療法士 身体障がい者(HIV感染症)、精神障がい者(双極症Ⅱ型)、セクシャルマイノリティ(ゲイ)の当事者。現在はオンラインカウンセリングサービスを提供する「勇者の部屋」代表。