今にも雪が降り出しそうなある夜、車のヘッドライトの先にたたずんでいた1匹の犬。途方に暮れた様子で後の飼い主さんを見つめていたのは、当時、生後半年ほどと思われる「サクくん」こと「朔太郎くん」でした。
現在は7歳を迎え、幸せな日々を飼い主のサクサクさん(@rinca.20130903)がThreadsに記録しています。
サクくんと家族がともに暮らすようになるまでには、紆余曲折がありました。
深夜、玄関先に現れた犬
サクくんと飼い主さんとの出会いは2019年10月20日のこと。外出先から帰宅した飼い主さんが、車庫に車を入れようとしたときでした。
「ヘッドライトに動物の影が飛び込んできたので、車から降りて確認したところ、これまで見かけたことがない犬が警戒しながら近づいたり離れたりしてきたのです」
その犬はしばらくすると、どこかへ立ち去っていきました。飼い主さんは「迷子なのかな。無事に家に戻れていたらいいな」と思いながら、その姿を見送ったといいます。ところが、出会いはそれで終わりませんでした。深夜2時、玄関の扉を引っかく音がして、飼い主さんは目を覚まします。
「キツネか? 鹿か? まさか熊? と思いましたが、『もしかして、あの犬かもしれない』と思い、そっと玄関のドアを開けると、あの犬が立っていたのです」
飼い主さんの目には、その表情が忘れられないものとして映りました。
「世界中の不幸を一身に背負っているかのように見えました。放っておくことはできず、その夜は一時保護。玄関で過ごしてもらうことにしました」
翌朝になってあらためて確認すると、サクくんは首輪をしていませんでした。一方で、毛並みはきちんと手入れをされていたかのようにきれいだったといいます。
「迷子に違いないと思いました。それからは警察や保健所、役所に連絡。チラシを作り、近隣のコンビニや動物病院、スーパーなどに貼らせてもらいました」
しかし、1週間が経っても飼い主は現れず、「この子は捨てられたんだ」と、飼い主さんは確信したといいます。
里親探しの始まり
サクくんをどうするのか。飼い主さんは悩みました。
「我が家には小さな孫がいる。私は足の手術を受けたばかり。サクを迎え入れることはできない状況でした」
そこで飼い主さんは、苦渋の決断の末、里親を探すことに。保護当時、サクくんはとてもおとなしく、吠えることもなかったといいます。その様子からは、里親が見つかる可能性も十分にあるように感じられました。
「こんなに物静かな子をなぜ、捨てたりしたのだろう。当時は、とても不思議に思いました」
ところが、日が経つにつれて、サクくんの印象はがらりと変わることに。
「まさに本領発揮。実は、とんでもない“暴れん坊将軍”だったのです」
里親先で問題発生、「我が家で迎えよう」
サクくんは飼い主さんの家で半月ほど過ごしたあと、里親さんのもとへーー。
「とても優しい飼い主さんだったんです。大切に育ててもらってホッとしていたところ、問題が起こってしまいました」
里親さんの家には猫が暮らしていました。遊び盛りだったサクくんは、その猫を追いかけまわしてしまったといいます。その結果、猫はストレスを抱え、病院へ行く事態にまで発展しました。
「里親さんは、いろいろと対策を講じてくださいましたが、猫のストレスは増すばかり。そのため、やっぱり我が家にサクを迎え入れることにしたのです」
こうしてサクくんは、再び飼い主さんの家に戻ってきました。
距離は縮まらず…数カ月後、希望の光が
家族として暮らし始めてからも、すぐに距離が縮まったわけではありませんでした。サクくんには人懐こい一面がある一方で、神経質でプライドが高いところもあったといいます。
「訓練しても、“伏せ”や“ハウス”などはせず、お腹を見せることもなかったです。ハグをしようものなら唸るほどでした」
人に甘えること、体を預けること、お腹を見せること。そうした行動は、サクくんにとって簡単なものではなかったのかもしれません。それでも、飼い主さんは時間をかけてサクくんと向き合いました。
すると数カ月が経ったころ、少しずつ変化が見え始めます。
「ようやく“伏せ”や“ハウス”ができるように。さらに1年後には、いやいやではあるもののハグをさせてくれたり、お腹を見せて甘えてくれるようになったりしました」
その姿を見たとき、「あぁ、やっと心を開いてくれたんだな」と、飼い主さんは胸にこみ上げるものがありました。
こうして家族と過ごす時間のなかで、サクくんは少しずつ安心できる場所を見つけていったのです。
「我が家になくてはならない存在です」
現在のサクくんは、子犬のころとはまた違う一面を見せています。
「2歳ごろまでは、犬にも人間にも友好的でした。でも今は、人間にはそこそこフレンドリーであるものの、犬とはほとんど関わろうとしません」
唯一仲良くできるのは、幼馴染の犬や、奇跡的に気が合った一部の犬だけ。「すっかり気難しい子になりました」と、飼い主さん。
一方、サクくんと暮らすようになってから、飼い主さんの生活には新しいつながりも生まれました。
「サクがいなければ出会えなかった方々と出会い、これまで足を運ばなかった場所へ行く機会も増えました。孫の頼もしいボディガードにもなってくれて、今では我が家に欠かせない存在です。私の生きがいであり、サクのいない生活は考えられません」