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「空いていたので座りました」新幹線の指定席に自由席券で着席 「予約客が来たらどけばいい」は通用する? 不正乗車になるケースも【弁護士が解説】

長澤 芳子 長澤 芳子

出張帰りの新幹線で、30代の会社員Aさんは手元の自由席券を見てため息をつきました。ホームには人があふれており、自由席車両は足の踏み場もないほどの超満員で、デッキに立つことすらつらい状態でした。

ふと隣の指定席車両をのぞくと、いくつかの空席が目に飛び込んできました。「どうせ空いているんだ。予約した客が来たらどけばいい」と自分に言い聞かせ、Aさんは吸い込まれるように指定席のシートに腰を下ろしました。

その後しばらくして、検札に来た車掌に「指定席券をお持ちですか?」と声を掛けられます。これに対してAさんは「自由席しかありませんが、空いていたので座りました。今から移動します」と答えました。すると車掌の表情は一変し、「これは不正乗車になります」と厳しい口調で告げられてしまったのです。

自由席券のまま指定席を占拠する行為は、法的にどのような罪に問われるのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。

「鉄道営業法」違反と「詐欺罪」の可能性

ー指定席に勝手に座る行為は、法的に何罪にあたりますか?

鉄道会社の規約に違反するだけでなく「鉄道営業法」に抵触します。同法第29条では、正当な理由なく他人の座席を占有し、指示に従わない場合に罰金などが科されると定められています。

さらに深刻なのは、刑法の「詐欺罪」や「電子計算機使用詐欺罪」に問われる可能性です。指定席料金を支払う意思がないにもかかわらず、そのサービスを不正に受けた場合、鉄道会社から「財産上不法の利益を得た」とみなされることがあります。単なるマナー違反ではなく、立派な犯罪行為になり得るのです。

ー「誰かが来るまで座るつもりだった」という言い訳は通用しますか?

指定席券とは、その座席を特定の区間で独占的に使用できる「権利」に対して支払われるものです。座席が物理的に空いていることと、その座席を誰でも使ってよいということは同義ではありません。

たとえ予約客がまだ乗車していなくても、その座席は鉄道会社が販売管理している「商品」です。無断で座る行為は、スーパーのレジを通る前の商品を勝手に使うことと同じです。

車掌に見つかってから「今から払う」と言っても、不正の事実は消えません。悪質と判断されれば、運賃と特急料金に加え、最大でその2倍の増運賃を請求されることもあります。

ーもし車掌に注意されても、座り続けたり拒否したりしたらどうなりますか?

その場合、鉄道会社は警察へ通報し、駅に到着した時点で警察官に引き渡されることになります。行為が執拗であれば「威力業務妨害罪」が成立することもあり、その場での現行犯逮捕もあり得ます。

実際、過去には不正乗車を指摘された乗客が居直ってトラブルになり、新幹線を遅延させたとして厳しく処罰された事例もあります。ネット上でもこうした行為は厳しく監視されており、特定されれば会社員としての信用は失墜してしまうでしょう。

◆北村真一(きたむら・しんいち) 弁護士
「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないという声もあがる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。

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