マーケティング担当のAさんは、あるリサーチ会社から「御社の商品を満足度No.1にしてみせます」という提案を受けました。指定された費用を払えば、特定の回答者が集まるアンケートを実施し、ほぼ確実に「満足度1位」のロゴを使用できるというプランです。
Aさんは「他社もよく使っている手法だし、効果的な宣伝文句になる」と導入を決意し、大々的に「満足度No.1」をうたう広告を展開しました。しかし数カ月後、事態は一変します。消費者庁から客観的な調査に基づかない不当表示として措置命令が下されたのです。
このような不当な「No.1表示」が招く法的リスクについて、まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。
「1位」をうたうために必要な根拠とは?
ー行政処分を受けた場合、企業にはどのような影響がありますか。
大きく分けて以下の3つの代償を払うことになります。
1つ目は、課徴金です。売上の一定割合が課徴金として課されます。実際に2026年3月12日に消費者庁は、モバイルルーターのレンタルサービスの表示をめぐり課徴金納付命令を出しました。その金額は1億7262万円です。
2つ目は、ブランドイメージの失墜です。消費者庁のサイトに社名が公表されるため、「嘘をついて商売をしていた企業」というレッテルを貼られます。
3つ目は、広告活動の制限です。一度処分を受ければ、その後の広告展開に厳しい目を向けられるからです。
「みんながやっているから」は、法廷では一切の免責理由になりません。安易な「No.1表示」を選択せずに、嘘のない広告を選択してください。
ーそもそも広告で「満足度No.1」を表示する際、どのような根拠が必要なのですか?
景品表示法では、商品の品質や内容が実際よりも著しく優良であると消費者に誤認させる表示(優良誤認)を禁じています。「No.1」をうたうためには、比較対象となる範囲が適切であること、調査が公平かつ客観的に行われていること、という2点が不可欠です。
例えば、競合他社の商品を意図的に比較対象から外したり、自社の既存顧客だけにアンケートを取ったりして得た「1位」は、客観的な根拠とは認められません。
ー身内でおこなったような調査でも、なぜ消費者庁に見抜かれてしまうのでしょうか。
消費者庁は、広告主に対して根拠となる資料の提出を求める権限を持っています。提出された調査データを確認すれば、サンプルの抽出方法や設問の誘導、実施期間の妥当性などは一目瞭然です。
特に最近は、広告主がリサーチ会社に「1位が取れるように調査を調整してほしい」と依頼したメールのやり取りなどが証拠となるケースもあります。「調査会社を通しているから安心だ」という言い訳は通用しません。
◆北村真一(きたむら・しんいち)
弁護士「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないという声もあがる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。