tl_bnr_land

「神業」水しぶき上げて跳ねる銀鮎、すべて“はんだ”で作った…だと?超絶技巧盆栽も…どうやって作った?デンソーに聞いた

そんでなライターズ そんでなライターズ

銀色に輝く鮎が、川底の石の上で身をくねらせている——。一見すると精巧な金属彫刻のようですが、素材はなんと「はんだ」。電子部品の接合に使われるあの、はんだです。鮎だけではなく、幹から枝先の葉一枚一枚まで作り込まれた「盆栽」もまた、すべてはんだで作られています。これらの作品を手がけたのは、自動車向け先進技術を手がけるグローバルメーカー・株式会社デンソー(DENSO)の技能者たち。2026年1月に愛知県刈谷市で開催された「刈谷マイクロメイカーフェア 2026(Kariya Micro Maker Faire 2026)」——個人やグループによる「ものづくり(Maker)」の展示・交流イベント——に出展されたこの2作品がSNSで拡散され、「すごすぎる」と大きな話題を集めました。

この投稿をしたのは、プログラマーの「犯人はヤス(@Ykoba791)」さん。精巧な質感と素材の意外性に注目が集まり、テレビ局の取材クルーや学生まで、会場でも多くの人が足を止めていたそうです。

 「銀鮎」は、実物の鮎のはく製を参考に制作された作品で、体表のうろこの質感から口の中の歯に至るまで、細部が驚くほど忠実に再現されています。一方の「はんだ盆栽」は、実際の盆栽を見学して葉の形状や生え方を研究したうえで造形されたもので、枝分かれの流れや葉の一枚一枚に至るまで、本物さながらの存在感。

投稿主さんが最初に作品を見たときは、作品が“はんだ”で作られていることに気づかなかったといいます。

「初見では、『DENSOさん、今年は彫刻かな。凝ってて綺麗だなー』程度の感想でしたが、制作者の方の説明を聞いて、『これ、はんだで作ったの!?』とびっくりしました。すぐに溶ける性質を持つ“はんだ”でここまで精密な造形を実現しているところに、素材特性への深い理解が活かされており、その技術はさまざまな環境での信頼性にもつながるものだと感じました」

さらに、作品に固定資産管理番号(企業や団体が保有しているPC機器などの固定資産を個別に識別・管理するために付ける番号)が振られていた点にも驚き、思わずその場で「バカなの!?」と口走ってしまい、制作者から笑われたと振り返ります。

「特に驚いたのは、はんだで鮎の質感や歯まで作りこんでいた点に尽きますね。後に調べたところ、こうした作品が競われる『はんだ付けアートコンテスト』というものがあるようで、この鮎も入賞作品だったことを知りました」

◇ ◇

この作品が生まれたきっかけは、デンソーが2年に1回開催している「デンソー夢卵」という社内イベント。アイデアコンテストを中心にした催しの中に「技能コンテスト」があり、社内の参加希望部署が参加して、さまざまな技能を競う場になっているそうです。今回話題となった「はんだ盆栽」は2016年、「銀鮎」は2018年に出展された作品で、いずれも電子機器の実装を生業とする技能者の技術をアピールするために制作されたものだといいます。この作品の背景について、株式会社デンソーの広報担当者に詳しく聞きました。

「作品を作ったのは、はんだごてを用いて電子部品の実装を行う技能者たちとその部署で、制作期間は『はんだ盆栽』が約4カ月、『銀鮎』が約3カ月です。『はんだ盆栽』がコンテスト内で2位を獲得したこともあり、その後も社内に作品を残す判断をしました。税務上必要な措置として、固定資産登録をして保管しております」

今回、「刈谷マイクロメイカーフェア 2026」への出展を社内で検討した結果、保管してあったこの2作品を展示することになったといいます。

制作する上での譲れないポイントを担当者に伺ったところ、1つ目に「同じ融点のはんだ、且つ、材料ははんだのみを使う」ことが挙げられました。

「通常、はんだ付けは融点の異なる材料を組み合わせるのが定石ですが、あえて同じ融点の『はんだ』同士を接合することに挑戦しました。溶かしながら、同じ温度で溶けてしまうものを接合するという、矛盾した工程には非常に高度な技術が求められます。しかし、あえて『すべて、はんだ』で作り上げることで、見た方に驚きを感じていただきたいと考えました。また、本来は接着剤の役割であるはんだを『金属材料』として捉え、やすり掛けやレーザー加工、溶接を施している点も、こだわりのポイントです」

もう1つのこだわりは、「モデルのリアリティーを追求すること」だそう。

「はんだ盆栽では、実際に盆栽屋さんで実物を見学させていただき、葉の形状や生え方を研究して、実物に近づけました。銀鮎では、鮎のはく製工房からはく製を購入し、形状や表面の質感などを参考にして制作しました」

SNSでは「なぜ作ったのかわからない」「すごすぎて理解が追いつかない」といった驚きの声が上がりました。これについては、本来の「デンソー夢卵」出展時を超えるほどの大きな反響に驚いていると話します。一方で、「10年余りたった今でも驚きと感動を与えられる作品を当時作り上げられたことを誇りに思う」とも語りました。

「従来、『デンソー夢卵』の技能コンテストは機械加工による作品が主流でした。そこへ『電子分野の技能者としても存在感を示したい』という思いから、この『はんだ』による作品制作に挑みました。本作には、通常のはんだ付けでは行わない異例の工程が多々含まれています。はんだごてを手に、素材の特性を熟知した上で、長年の経験による繊細な感覚を注ぎ込む。この極めて難易度の高い作業を完遂したことは、我々の電子機器実装における『確かな品質』の裏付けでもあります」

「制作から10年余り。SNSなどの反響により、当時の出展時を超える驚きの声をいただけることを大変光栄に思います。時を経ても色あせない感動を届けられたことを誇りに、このものづくりの精神を次世代へと引き継いでまいります」

まいどなの求人情報

求人情報一覧へ

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース