人やペットの姿を、平面の写真ではなく立体のフィギュアで残す。3月1日にオープンしたばかりの3Dフィギュア制作スタジオ「3DME(スリーディーミー)」(神戸・六甲道)では、思い出をフィギュアで残す新しい記録の形を提案している。
全身をわずか2秒で撮影し、3Dデータから精巧なフィギュアを制作。「その瞬間」を立体で残せるのだ。運営会社のレジスタ株式会社代表取締役・毛受(めんじょう)義晴さんに取材した。
「一瞬」を切り取って晴れ着の帯までリアルに再現
JR六甲道駅から徒歩で1分、「3DME」の店舗兼スタジオ内に足を踏み入れると、壁に設営された棚の上に展示されている大小さまざまなフィギュアが目に飛び込んでくる。晴れ着姿の女性、椅子に腰かけてノートパソコンを打つ女性、デニムを着た猫、哺乳瓶をくわえた赤ん坊など、いろいろなシチュエーションのフィギュアが並ぶ。その中で、子どもを連れた親子3人のフィギュアは、毛受さんのご家族だ。
これらのフィギュアは、周囲を96台のカメラとプロジェクターライトで囲まれたブースで撮影された写真を3Dデータ化し、専用の3Dプリンターで制作されたもの。晴れ着の帯の折り目まで、リアルに再現されている
同様のサービスは従来からあるが、「3DME」最大の特徴は撮影時間が極めて短いことにある。
「従来型の、カメラが被写体の周りを回る方式だと、10秒ほどかかります。『3DME』は2秒で撮れるため、じっと止まっていることが難しい子どもやペットの撮影も、比較的簡単にできるようになりました」
犬は「待て」ができれば比較的簡単に撮影でき、猫は飼い主が肩の高さで抱いていればおとなしいことが多いという。猫の顏が飼い主とは逆方向になるが、立体になれば全周どこからでも鑑賞できるため、顔の向きは気にならないそうだ。
撮影後は3Dデータが生成され、スマートフォンでQRコードを読みとると映像を見ることができる。そのデータからフィギュアを制作する場合は、大きさをS、M、Lの3サイズから選んでオーダーすると、おおむね1カ月後に手元へ届く。費用は、被写体が子どもならSサイズ(5cm)で11,880円から。ペットは、5cmサイズで17,380円から。
きっかけは「娘の成長を写真以外で残したい」
毛受さんは、サラリーマンを経て独立した後、マーケティング支援を主軸とするコンサルタント活動をしていた。プロの映像クリエイターではない毛受さんが「3DME」を始めることになった動機は、娘さんの成長記録を残したいという想いだった。
「毎年の誕生日に、写真スタジオで等身大の写真パネルを制作してもらっていたのですが、もっと違う形で残せないかと考えました」
そんなとき展示会で出合ったのが、すでに東京で「3DME」を3店舗展開していた株式会社イメージ・マジック(東京・文京区)だった。制作してもらったフィギュアを自宅に飾ったとき、写真とは違う「実在感」に強い価値を感じたという。毛受さんはこれを関西でも展開したいと考え、イメージ・マジック社と業務提携を結び、関西で初となる店舗をオープンさせた。
東京の店舗が渋谷・池袋・銀座に展開されているのに対し、毛受さんはあえて六甲道を選んだ。
「大都会の真ん中は集客を見込めるでしょうけど、誰に何を売ってるのかよく分からない消耗戦に陥る恐れがあります」
毛受さんは人の生活圏に根ざし、継続的に利用される文化として定着させることを目指しているのだ。
人生の節目に訪れる様々なメモリアルに活用してほしい
「3DME」の今後について、個人利用だけでなく、企業や団体との連携も視野に入れているという毛受さん。入学、卒業、就職、結婚…など、人生の節目、あるいは警察官や自衛官など制服を着用する職業人の定年退職記念など、発想次第で活用の幅はどんどん広がる。
「生成AIが台頭し、ビジュアルや文書のみならず音楽までが誰にでもつくれる時代になって、デジタルデータの価値が低下しています。そんな時代に『触れる記録』というアナログな価値を、デジタル技術で提供したい」
その場の空気ごと写し取ったようなフィギュアには、その瞬間の感情まで封じ込めた趣を感じるのである。
◇ ◇