誕生日の祝い方には、それぞれの家庭のスタイルがあります。プレゼントを贈る、旅行に出かける、外食で少し特別な時間を過ごす…などなど。しかし、そのお祝いの形が、いつの間にか主役の意思から離れてしまうこともあります。東京都在住のDさんは、夫が用意してくれた誕生日ディナーをめぐって、思いがけない違和感を覚えることになりました。
「予約が取れたよ」から始まった誕生日の計画
Dさんは近々50歳の誕生日を迎えます。先日、夫がうれしそうに報告してきました。
「50歳の誕生日に連れていきたい店がある。予約がなかなか取れない高級寿司屋だけど、奇跡的に予約が取れたんだ」
聞けば、その店は常に予約が埋まっていることで有名な超高級寿司店です。普段なかなか行けるような場所ではありません。しかも予約日は、偶然にもDさんの誕生日当日。夫は「せっかくの誕生日だからいいお店でお祝いしよう」と言ってくれました。
Dさんは、そんな夫の優しさに特別な夜になりそうだと、素直にうれしく思っていました。
ところが、話はそこで終わりませんでした。
「たださ、取れたのが4名の個室なんだよね」
そう前置きをしたあと、夫が続けたのは意外な言葉でした。
「あと2人、誰誘う?」
思わず「え?」と聞き返しました。誕生日ディナーの話だったはずです。なのに突然、追加メンバー募集が始まったのです。
誕生日なのに、なぜか食事会の空気
もともとの話は「なかなか予約が取れない店が、たまたま誕生日の当日に取れた」というものでした。それがいつの間にか「4名個室だから誰か呼ばなくては」という方向に変わっていきます。
もちろん、2人きりのロマンチックな時間を求めているわけではありません。むしろ、普段忙しくてゆっくり話せない家族のことや生活のことを、落ち着いて話せる時間にしたいと思っていました。
しかし、そこに関係のない人が加われば話は変わります。それはもう誕生日ディナーではなく、ただの食事会です。
「それって、本当に私の誕生日祝いなの?」
そんな疑問が、ふと頭をよぎりました。
もしかして、目的は“その店に行くこと”?
しかも、その店はかなりの高級店です。
正直なところ、そこまで無理をして連れて行ってくれなくてもいい、というのが正直な気持ちでした。
ところが夫は言います。
「どうしてもその店に連れていってあげたい。誕生日だからね!」
その言葉を聞きながら、別の疑問も浮かびました。
もしかして、本当に行きたいのは夫自身なのではないか。誕生日という理由が、ただのきっかけになっているだけではないのか。
実際、その店に行けば夫も同じ寿司を食べて満足します。
そうなると、祝われているのか、付き合わされているのか、少し分からなくなります。
誕生日ディナーの不思議な構図
誕生日ディナーは、本来主役のための時間のはずです。けれど時々、「連れて行ってあげた」というイベントのように扱われることがあります。
普段行くことのできない高級店での食事は確かに特別です。しかし、その時間が本当に主役の希望に沿っているのかどうかは、案外見落とされがちです。
ふと現実的な考えもよぎります。
もしその予算があるのなら、いっそ直接渡してもらったほうがありがたいのではないか…。
誕生日祝いの形は人それぞれですが、主役の気持ちが少し置き去りになると、その豪華さとは裏腹に、妙な違和感だけが残ることもあるのです。